職場でのコミュニケーションでストレスを感じたら?アサーティブ・コミュニケーションを意識してみよう。

コミュニケーション改善
アサーティブ・コミュニケーション
職場
2021/2/15
2021/9/14

職場でのコミュニケーションでストレスを感じたら?アサーティブ・コミュニケーションを意識してみよう。

はじめに

病気や障害のある方が、仕事中に体調の変化があったり、心配や不安があって相談したいな、と思ったときにもなかなか相談しづらいな、ということはありませんか?職場に理解があり、「何かあったら気軽に声をかけてね」と言ってもらっていたとしてもなかなか自分からは言い出しにくいこともあると思います。職場が忙しく、上司と話す時間が持てなかったり、上司や同僚が病気や障害について詳しくなく、助けを求めづらい、ということもあるかもしれません。

心配な状態が長く続き、相談できずに我慢してしまうと、結果として仕事を続けることが難しくなる場合もあります。やはり、必要なことは自分でSOSを発信していくことは大切です。では、どのようなコミュニケーションをとっていけばいいのでしょうか。ここでは、「自分も相手も大切にする」と言われる、アサーティブ・コミュニケーションについてみていきましょう。

 

アサーティブ・コミュニケーションとは

職場でのコミュニケーションでストレスを感じたら?アサーティブ・コミュニケーションを意識してみよう。

アサーティブ・コミュニケーションでは、相手の気持ちも尊重しながら、自分の気持ちや意見を「誠実に、率直に、そして対等に」表現するコミュニケーション方法です。アサーティブの概念は70年ほど前のアメリカで生みだされ、現在では、職場の人間関係を円滑にするために企業研修などで取り入れられています。アサーションと呼ばれることもあります。
日本では、行動療法の1つとして紹介され、就労訓練やデイケアなどのプログラムにも「アサーティブ・トレーニング」として導入され、「本当に必要なこと、伝えたいと思っていることを、適切な言葉で伝えられる」というスキルが身に付きます。スキルなので元々は、自分の意見を言いすぎる、または引っ込み思案でなかなか言い出せない、といった場合のどちらでも、身に着けることができます。

 

アサーティブ・コミュニケーションが必要な理由

職場では、多くの場合誰と一緒に働くか自分で決めるのは難しく、様々な関係の複数の人と一緒に業務を進めることが多いと思います。かかわる人数が少なくても、その人が自分と相性のいい人かどうかは分かりません。その上で、自分が病気や障害があり、言いにくいことも伝えなければならない、という状況はそれ自体がストレスになるかもしれません。

また、人は大きくわけて4つのタイプのコミュニケーションのタイプがあります。

  • 自分のことを中心に考え他者には攻撃的な言動をとってしまう「アグレッシブ型」
  • いつも相手に合わせてしまい自分の主張ができない「ノンアサーティブ型」
  • 何か言いたいことがあっても言葉で伝えられず陰口や態度で主張してしまう「作為型」
  • 感情的にならず、適切に自分の状況を伝え、相手の立場も大切にする「アサーティブ型」

アサーティブ型以外のコミュニケーションが多くなってしまうと、適切な情報共有や危機管理ができずに、業務に支障をきたしたり、誰か特定の人にストレスがかかって職場の人間関係がうまくいかなくなることが想像できるでしょう。アサーティブなコミュニケーションを身に着け、心がけることで、自分だけではなく周りも含めて円滑なコミュニケーションができるようになる可能性があるのです。

 

アサーティブ・コミュニケーションを実践するには

職場でのコミュニケーションでストレスを感じたら?アサーティブ・コミュニケーションを意識してみよう。

長年身についたコミュニケーションの癖や態度はなかなか変えられませんが、自分のコミュニケーションパターンに気づき、それをアサーティブなものに変えていくことは可能です。

事例で見ていきましょう。

例)Aさんは、午後になると薬の影響で立ち仕事が辛くなってしまうことがある。しかし、職場は午後の方が忙しくなる傾向があり、薬の影響のことも同僚に伝えているが、動ける日もあるため立ち仕事の手伝いを頼まれることがある。急に頼まれた際にうまく自分の気持ちを伝えられるようになりたい。

自分の気持ちを、言葉にしてみる

この事例では、急に「今入れる?」など聞かれた場合に、辛くても「はい、分かりました」と答えてしまって自分が苦しくなったり、逆に「いえ、入りません」とだけ答えて人間関係を悪くしてしまう、などの懸念が考えられます。

このとき、Aさんは、ただ単に「手伝いに入りたくない」わけではなく、「困って」いました。この場合は、シンプルに「本当は入りたいのですが、薬の影響で午後の体調が悪い日にヘルプの声かけをされると、困っているので、相談さえてもらえますか」とそのまま気持ちを言葉にします。職場のせいや薬や自分のせいにするのではなく、シンプルに「困っている」という自分の気持ちを言葉にする、ということです。

要点を絞って、伝えたいことを伝える

また、伝えられた相手は、何が「困っている」のは推し量れない部分があります。声かけをされること自体に困るのか、休憩時間が十分にないのが困るのか、そもそもの業務内容が合っていないのか、などが考えられると思います。「あと少ししたら入れます」というのも、「あと少し」が10分なのか30分なのか1時間なのか、人によって受け取り方が違う可能性があります。

具体的な数字や代替案などを伝えることができれば、相手もそれに合わせた判断をすることができます。「1時間くらいしたら入れます」「今日は難しそうなのでこちらを進めておきます」など、明確に伝える必要があります。

相手の立場も理解する

このように自分の立場や言いたいことを伝える際にも、相手の立場も理解しているということを伝えましょう。
「今とても忙しい時間帯なのは分かっています」という言葉や、「自分もこのような体調の変化があることを、定期的にご相談できていなかったのですが・・・」など、お互いの状況や関係性をフラットな視点で見てそれを言葉で伝えるのが望ましいです。

アサーティブな関係とは、うまくコミュニケーションをとることで相手より自分が優位に立つことではなく、あくまでも「対等な」関係で、どちらかが正しくて、それには従わなくてはならない、というものではありません。お互いに率直に自分の立場からの意見、そして相手の立場に立った視点でコミュニケーションがとれるのが望ましいです。

 

まとめ

アサーティブ・コミュニケーションは、人の「考える権利」「感じる権利」「表現する権利」を尊重する、率直で対等なコミュニケーションの方法です。何かを考える、感じる、表現する、それ自体は、役職や立場関係なく誰もが行うことができるものです。また、相手にもその権利を保証することで、お互いに素直な本音を話していくことができます。

病気や障害がありながら感じる困り感も、本人にしか分からない感覚や思いもあり、それは言葉にして初めて人に伝わるものでもあります。アサーティブ・コミュニケーションをうまく使えれば、病気や障害の有無に関係なく、上司や同僚の方と一緒に問題について考えることができますし、それが職場の雰囲気をよくしていくことにも繋がります。

もちろん、完全にアサーティブなコミュニケーションができるようになるのは難しいことです。「あ、間違ったな」と思っても、「次はどう伝えよう」と考えることが、自分も相手も大切にすることに繋がります。仕事は1人ですることはできません。お互い困ったときには相談したり、話ができる関係を作るための1つのヒントにしてみてください。