ストレスを抱えがちな方は覚えておきたい、4つのヘルスケアと制度

制度/補助金
メンタルヘルス
支援制度
2021/10/11
2021/10/1

ストレスを抱えがちな方は覚えておきたい、4つのヘルスケアと制度

みなさんは、“セルフケア”という言葉をご存じでしょうか。厚生労働省が発行した「労働者の心の健康保持増進のための指針」では、企業における適切なメンタルヘルス対策として、4つのメンタルヘルスケアを挙げており、その中の一つがセルフケアとなっています。今回は、4つのケアの解説をすすめ、私たち労働者に求められているストレス対策について考えていきましょう。

 

 

ストレスを抱えがちな方の特徴

ストレスを抱えがちな方は覚えておきたい、4つのヘルスケアと制度

同じ環境で同じ出来事が起きたとしても、ストレスの感じ方は人それぞれとなります。
ストレス対処の考え方に首尾一貫感覚(SOC)という概念があります。
このSOCは、ユダヤ系アメリカ人のアーロン・アントノフスキーが第2次世界大戦中のナチスドイツの強制収容所から生還を果たしたユダヤ人女性を対象に行った調査をきっかけに発見されました。
「強制収容所という過酷な環境下でも健康を保ち続けることができた人が一定数いた」ということに着目し、極限のストレスに打ち克つ力として見いだされたのがSOCでした。
SOCは、把握可能感、処理可能感、有意味感の3つの要素で構成されます。

①把握可能感

把握可能感は、大きな困難にぶつかった際に、混乱せずに先を見通せる感覚です。
つまり、自分を取り巻く環境の中で起こる出来事は、無秩序で偶発的なものではなく、一貫性のあるものであると考えられる力です。

この感覚が低いと、自分の置かれている状況が理解できなかったり、仕事の見通しが立てられず、これからどうしたらよいのだろうと不安になり、気力が低下してしまいます。

②処理可能感

処理可能感は、「自分がよかれと思う行動を最後まで成し遂げれば、最終的には何とかなるだろう」という、自らの努力とともに良い意味で楽観的に未来を見据えることができる感覚のことです。
例えば、過去にうまく切り抜けた経験がある方はこの感覚が高いかもしれません。処理可能感が高いと、自身が出来事の犠牲になっているとは感じにくく、困難なことが起きたとしても、自分は柔軟に対処できると感じることができます。

③有意味感

有意味感とは、人生や目の前の仕事などに対して、自分なりに何らかの意味を見出せる感覚のことです。この感覚が低いと、物事を「どうでもいいや」と思ってしまったり、「なぜこんなにつらい思いをしなければならないのか」という精神状態になってしまいます。
SOCは、成功や挫折など、人生経験を基に少しずつ成熟していく感覚となります。このSOCは以前からある考え方ではありますが、新しいレジリエンスの概念として改めて注目されています。

 

 

4つのメンタルヘルスケア

ストレスを抱えがちな方は覚えておきたい、4つのヘルスケアと制度

厚生労働省では、企業において適切なメンタルヘルス不調対策を行うための指針として、「労働者の心の健康保持増進のための指針」を発行しました。

この指針では、4つのケアと呼ばれる活動を効果的に推進し、職場環境の改善、メンタルヘルス不調への対応、休業者の職場復帰のための支援等が円滑に行われることを目的としています。

①セルフケア

対象は従業員だけでなく、管理監督者を含めた“労働者全員”となります。働くすべての人が自らの不調に気づき、予防対処を行うことです。

また、事業者が、労働者がメンタルヘルス対策の正しい知識を得られるように支援を行うことも含まれます。具体的には、ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解、ストレスチェックを活用したストレスへの気づき、ストレスへの対処が挙げられます。

②ラインによるケア

職場の管理監督者が日常的に行うメンタルヘルス対策を指します。職場環境の把握・改善、労働者からの相談対応、職場復帰における支援などが含まれます。ラインによるケアでは、“いつもと違う”部下にいち早く気づくことが大切となります。

③事業場内産業保健スタッフ等によるケア

企業にいる産業医をはじめとした産業保健スタッフによるメンタルヘルス対策です。①、②が効果的に実施されるよう労働者及び管理監督者に対する支援を行います。

④事業場外資源によるケア

会社外の専門的な機関の活用によるメンタルヘルス対策です。必要に応じて事業場外の医療機関や地域保健機関のメンタルヘルスケアの専門家が勤労者や管理監督者を支援することが含まれます。

このように、労働者本人を含めた各担当者が協力し、役割遂行をすることで、効果的なメンタルヘルス対策を推進していきます。では、労働者本人の役割でもあるストレスやメンタルヘルスへの理解を進めていきましょう。

 

 

ストレスに関する制度

ストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレス状況について検査を行い、その結果を本人に通知します。労働者が50人以上の事業所ではストレスチェックが義務づけられています。

ストレスチェック制度の目的は、①自らのストレス状況の気づきを促し、個人のメンタルヘルスの不調のリスクを低減させること、②検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することです。

厚生労働省によるメンタルヘルスの基本的考え方では、メンタルヘルス不調を未然に防止する“一次予防”、メンタルヘルス不調を早期に発見し適切な措置を行う“二次予防”、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う“三次予防”が円滑に行われることを挙げており、ストレスチェック制度は一次予防を中心とした対策として創設された制度となります。

ストレスチェックの調査票は、①職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目、②心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目、③職場におけるほかの労働者による当該労働者への支援に関する項目の3つの領域が含まれている内容となっています。
労働者自身は、4つのケアであるセルフケアに基づき、定期的なストレスチェックを行うことでストレスに気づき、対策をとっていくことが求められています。

 

 

今回は、企業におけるメンタルヘルス不調対策を行う指針として4つのケアを確認しました。労働者自身を含めた様々な担当者が役割を担うことで効果的な対策を推進しています。そして労働者自身の役割は、セルフケアであり、正しい知識を持つこと、気づくこと、対処を行うこととなります。

現在、様々なストレス対処法を本やネットで探すことはできますが、自分自身に適した方法であるかはすぐにはわかりません。知識を身に着け、実際に行動実験を繰り返し、自分自身に合うストレス対処法を見つけることができるとよいと思います。