うつ病は再発する?再発の原因と再発予防に大切な事

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2021/6/7
2021/7/13

うつ病は再発する?再発の原因と再発予防に大切な事

うつ病は再発しやすい病気と言われています。
しかし、実際にどのようにして再発を予防したらよいのか、案外知られていないと思います。今回は、なぜ再発予防をしなければならないのか、また実際にどのような方法で予防するのかについて考えていきたいと思います。

 

なぜ再発予防をするのか

うつ病から完全に回復した後に症状が再度出現することを再発(再燃)と呼びます。
厚生労働省は、初発患者の再発率は60%、2回目では70%、3回目では90%と報告しています。つまり、うつ病は繰り返すたびに再発のリスクが高まっていることがわかります。

うつ病の再発因子として、残遺症状の有無があります。残遺症状(残遺状態)とは、うつ病の諸症状はおおむね治ったが、後遺症のようにいくつかの症状が残っていることを指します。例えば、不眠傾向や、意欲低下、集中持続困難、易疲労感などが挙げられます。

残遺症状が認められる場合には、再発するまでの期間的な速さが3倍となり、残遺症状無し群の3倍の人数が再発するという研究結果もあります。つまり、うつ病の症状が残っている方の場合、多くの人が今までより早くに再発してしまうということです。

さらには、再発を繰り返していると症状が慢性化・遷延化し、引き金がなくとも症状が出現することがあるようです。例えば、朝起きて、理由なく気分が憂うつになることがあるということです。

ここまで見ても再発を繰り返すと、引き金なく症状が出現し、固定化していきます。治療も難しくなっていくことがわかると思います。

 

どのように再発予防していくのか

それでは実際にどのようにして再発を予防したらよいのでしょうか。まずは、自身の生活を整えることで症状を管理していくことが大切となります。生活を整える中で着目していただきたい5つのポイントを紹介したいと思います。

 

1.生活リズムの安定

うつ病は再発する?再発の原因と再発予防に大切な事

1つ目は生活リズムです。後述する睡眠とも関連がありますが、まずは、決まった時間に朝起きて、太陽光を浴びることが重要です。
太陽光を浴びることでセロトニンが活性化します。セロトニン工場のスイッチを入れるなんて言ったりもします。
セロトニンは、心と体の健康を維持するために重要な物質で、セロトニンが不足すると、抑うつ症状が出たり、睡眠不足になったり、集中が続かなかったりと、うつ病の症状と密接な関りがあることがわかります。
またセロトニンは睡眠を誘発させるメラトニンの原料にもなっています。そして、なかなか朝起きられず、お昼まで寝ている人はセロトニンを作りづらい生活リズムになっていることが考えられます。すると、朝起きるのがつらくなり、太陽光を浴びられないという悪循環になってしまいます。これでは、うつ症状はなかなか改善していきません。
もし、病気がなかなか治らず、昼まで寝てしまう人がいましたら、手始めに朝起きて太陽光を浴びることを実践してみてください。

 

2.運動

うつ病は再発する?再発の原因と再発予防に大切な事

2つ目は運動です。運動も前項と同様にセロトニンを増やす効果があります。
よく耳にする朝起きて散歩やランニングをすることを推奨するのはこのためです。さらに、脳の中ではセロトニンだけでなく、 BDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌さるようになります 。
BDNFは、脳を育て、成長させるために必要な肥料の役割を担っている物質です。
このBDNFの分泌が向上すると、記憶や集中、学習、実行機能など、脳の機能が向上すると言われています。運動をすることでメンタルの安定と脳の機能の向上が図れるため、ぜひ取り入れていただきたいです。

私の職場の患者さんも毎朝1.5キロほど走って来所される方がいるのですが、それを始めてからとても気分がよいと本人も実感されているようで、調子も安定しています。その方は比較的やせ型のため、ダイエットが目的というよりは、メンタルヘルスの安定のためにランニングをしていることを自覚して続けています。
最近では、運動への注目はますます高まり、ダイエットよりもメンタルヘルスの安定のために行っている人が多くなっているようです。

 

3.睡眠

うつ病は再発する?再発の原因と再発予防に大切な事

3つ目は睡眠です。1、2ともつながっていますが、しっかり睡眠をとることが大事です。うつ病の状態は、脳が疲労し、機能が下がっています。脳の疲労を回復し、休ませる力があるとわかっているのは、現状は“睡眠のみ”になります。

そのため、睡眠時間をきちんと確保し、脳を休ませることが重要となります。その上で1、2のようにセロトニンやBDNFが作りやすい環境を整えていくことが必要となっていきます。おおよそ私たちは7時間から8時間寝るとよいと言われています。ちなみに6時間以下の睡眠ですと、アルコールで酔っている酩酊状態と同じぐらいのパフォーマンスになるという研究結果もありますので、短い睡眠は脳に負担がかかっていることがわかります。

そして睡眠時間の固定化も大切です。睡眠時間が固定化されますと、おのずと朝の起床時間も固定化して行きます。1、2とつながっており、繰り返しになりますが、睡眠時間を固定化し、朝決まった時間に起きて運動をすることがとても効果的になります。
精神科医の樺沢紫苑先生は、朝7時に起きて朝散歩を30分ぐらいしている人で、うつ病をはじめメンタルヘルスの不調をきたしてる人は見たことがないとおっしゃるぐらい、睡眠、運動、生活リズムの習慣が効果的なのです。

 

4.服薬

4つ目は服薬です。主治医の先生から出されている薬を処方通り飲むということ、さらにその効果や副作用について理解し、主治医とコミュニケーションを取れていることが大切です。
主治医に薬の効果や副作用について聞いていないのに、処方されるがまま薬を飲み続けたり、自分で薬を飲むことをやめたり(抜薬)していないか確認をしましょう。

抜薬状態で診察時に具合が悪いと主治医に相談をしても、主治医としては、薬を飲んでいるという前提で診察をしています。もし薬を飲んでいないのであれば、薬を飲んでいないことを主治医に伝えましょう。薬を飲んでないということは、飲みたくない理由や飲めない理由があると思います。

まずはその理由を主治医に相談して解決するとよいかもしれません。主治医に伝えることへの不安や心配がある方は社会生活トレーニング(SST)というコミュニケーションのトレーニング法もお勧めです。担当の支援者がいる場合は相談してみてください。

 

5.相談先を作る

5つ目は相談先を作ることです。
私たちのようなコメディカルスタッフに相談できる方は、しっかり相談していただいて対策を練っていけたらいいかなと思っております。
相談先もない、話す人もいないという“孤独”にならないことが大切です。孤独は、病気と非常に密接な関係にあります。孤独な環境では、症状はなかなか良くならないこともわかっています。社会生活トレーニングを開発したリバーマン先生は社会的接触(ソーシャルコンタクト)の重要性を説いています。
私たちは、社会と、誰かと接することにより、メンタルヘルスが保たれるのです。再発予防のためにもそういう場を作り確保することは大切になります。

 

まとめ

今回は、始めにうつ病の回復や寛解、再発予防について確認しました。
そして、再発予防にはどういった方法があるのかを確認していき、最後に治療が長引いたり、再発リスクを高める行動を考えました。再発予防の方法については5つ挙げましたので、まずは自分ができそうなところから始めていくことがよいと思います。

今回の内容は、もしかしたら新しいものはなかったかもしれません。
しかし、うつ病が治らない、再発を繰り返しているという方は、今回の紹介した、いわゆる簡単かもしれないことがなかなか継続できてないこともあると思います。
しっかりと専門家のサポートを受けながら再発を予防し、自分らしく生活できることを願っています 。