うつ病と正しく向き合うための心理教育プログラムとは?

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うつ病
心理教育
2021/11/9
2021/11/1

今回は、メンタルヘルスの治療法としてエビデンスも認められている心理教育について考えていきたいと思います。

 

心理教育とは

うつ病と正しく向き合うための心理教育プログラムとは?

はじめに心理教育とは何かを考えたいと思います。
日本心理教育・家族教室ネットワークから以下引用しています。“心理教育とは、「精神障害やエイズなど受容しにくい問題を持つ人たちに、正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え、病気や障害の結果もたらされる諸問題 ・諸困難に対する対処法を習得してもらう事によって、主体的に療養生活を営めるように援助する方法」と定義されています。

つまり、病気や障害、そのほかの問題を抱えて、知識もなく、相談もできず、途方にくれている本人、ご家族に必要な知識や情報を知ってもらう機会を広げ、どう問題に対処するかを協働して考えることで、本人やご家族が自分たちの問題に取り組みやすくなり、何とかやっていけるという気持ちを回復する、そういうことを目指している支援法のひとつで実証的効果も確認されています。家族だけのこうした集まりは家族教室とも呼ばれます。”と述べられています。

今回はメンタルヘルスを中心に進めていきますが、受容しがたい問題とは、例えば、がんやHIV、中途障害、糖尿病も対象となります。
皆さんが想像しやすい例でいうと、生活習慣病の一つである糖尿病の心理教育が挙がると思います。糖尿病の心理教育は入院中や糖尿病外来で行われ、食事や運動など日常生活でどのような所に気を付けたらよいのかを学ぶと思います。

メンタルヘルス領域で扱われる心理教育プログラムでは、国府台モデルが有名だと思います。
国府台病院精神科で厚生労働省精神・神経研究委託費による、心理教育普及ガイドラインとそのツールキットの開発が行われました。それを元に、現在では、日本心理教育・家族教室ネットワークという組織がインストラクター制度を設け、研修を開受けられるようになっており、筆者も研修を受けたインストラクターの一人となります。

心理教育では、病気に対する適切な知識を持つことと、対処法を学習することを目指します。私が資格を取った時と現在では、最新の知見も変わっているかもしれません。本人が病気に対して正しい知識を持つことが大切となります。そして、本人が病気に対して抱いているイメージを聞き取り、必要であれば修正を図っていきます。方法は、ロールプレイで実際に体験をし、気づきを深め、病気に対する知識の偏りの修正を図ります。例えば、カクテルパーティ効果はロールプレイで使われることが多いです。

カクテルパーティ効果とは、騒がしい状況や多くの人が雑談をしている中でも、自分に必要な声は聞き取ることができる脳機能のことです。私たちは脳の仕組みから、通常自分が欲している情報だけを集めるようにできているということ、病気や症状の影響でそれが上手く機能しないことを、ロールプレイを通して体験的に学習します。

また、ダム理論もよく用います。このモデルはストレスを雨に、私たちの許容量をダムに例えて説明します。薬はダムの決壊を防ぐ堤防です。しかし、薬に服用量には限度があり、ストレスもため続けることは難しいですねよ。実際のダムも、雨が降り続けばいずれ許容量を超えてしまうため、私たちは放流する術を身に着ける必要があります。また、雨にも様々な種類があります。小雨なのか、大粒の雨なのか等、これは自分のストレスの質を知ることを意味します。そして、ストレスの雨で緩くなった地盤を固めるために植林(外的資源)をする必要があります。

また、本人向けのほかに家族を対象とした、家族心理教育プログラムも実施されています。EE研究をご存じの方もいるでしょう。EE(Expressed Emotion)は日本語では感情表出と訳します。
以前は、退院した患者さんは、家族のもとで暮らした方が再発しにくいと考えられてきましたが、実際には家族と離れて暮らす方が、再発率が低いことがわかりました。その後の研究で、家族が本人に接する際の感情表現の仕方が影響を与えているのではないかということが示唆されました。EEは、本人に対する家族の感情表出に批判、敵意、過度の感情的巻き込まれが強くみられる場合を高EE、そうでない場合を低EEと言います。

高EEの場合は低EEに比べ再発率が高くなります。こうした研究をはじめ、病気についての知識や対処法をご家族にも知っていただき、本人がより安心して生活できる体制を整えます。

 

心理教育の目的

うつ病と正しく向き合うための心理教育プログラムとは?

前項でも触れていますが、心理教育の目的は、本人や家族の心理面に配慮し、自分の病気に対する適切な知識と、対処を学習をすることです。

もしかしたら、今までよかれと思って取っていた対処法が、自分を助ける方法ではなかったり、かかわり方が本人に合っていなかった場合もあります。正解、不正解ではなく、本人、その家族に適した対処方法を探していきます。
心理教育は、インストラクターである専門家の助言と、同じ病気をもつ仲間やその家族の言葉も聞くことができる機会となっています。

 

うつ病の方への心理教育

次に、うつ病の心理教育についても触れていきたいと思います。
うつ病の方への心理教育の効果は、様々な研究でエビデンスが得られています。

うつ病の方のご家族に向けた支援も行われており、個別、複数の家族集う家族教育等様々な形を取っています。内容は、うつ病の特徴や、治療課程、家族の役割・接し方、再発予防が挙げられます。

 

まとめ

現在では、病気に対する知識は、インターネットや書籍を通して自分自身で情報を集めることもできると思います。
自身で調べることも大切ですが、一人で情報を集めようとすると、偏りが生じることもあります。できれば、インストラクターがいたり、研修を修了しているスタッフが勤務している病院やデイケアで心理教育を受けることをお勧めいたします。

集団で受けるメリットは、インストラクターやスタッフだけでなく同じ病気を持っている仲間の言葉も聞くことができる点です。
もちろん集団が苦手であれば、個別のカウンセリングや面談で行う心理教育もありますので、一度主治医の先生や支援者、公的機関に相談をしてみるとよいかと思います。