うつ病の治療が長引く場合、セカンドオピニオンという選択もあり?

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うつ病
セカンドオピニオン
2021/6/7
2021/6/7

うつ病の治療が長引く場合、セカンドオピニオンという選択もあり?

うつ病は、昨今よく耳にする精神疾患で年々患者数も増え、珍しい病気と捉える人は少なくなってきました。しかし、うつ病は目には見えづらい疾患で、原因もまだはっきりとは解明されていないことも多く、経過も人によって異なります。
一言にうつと言っても、うつ状態、うつ病、そううつ病など、症状によって診断名が異なり、最初の診断名から変化していくこともあるでしょう。

特に精神疾患は主治医との相性や信頼関係も治療の経過に大きく影響しますし、治療方針に疑問や不安が出てきて、他の医師からの診断も受けてみたくなることもあるかもしれません。そのような中で、うつ病でセカンドオピニオンを検討する方は比較的多いといえます。

 

セカンドオピニオンとは

うつ病の治療が長引く場合、セカンドオピニオンという選択もあり?

セカンドオピニオンとは、納得のいく治療方法を選ぶために、現在受けている診断・治療に関して他の専門家(主に医師)に意見を聞き、その後に自分にとって納得のいく治療法を選ぶ際の参考にするものです。

セカンドオピニオンの成立する元になる考え方に「インフォームドコンセント」というものがあります。以前は医療が提供される際に、主治医である医師が医療を受ける患者に対して治療方針を決め、それを与えるというような関係で、患者は医療行為を医師にゆだねざるを得ない状況がありました。

そのような状況の中、1990年代ごろから患者が医師から十分な説明を受けて治療の内容を理解したうえで、自分の意志でその方針に同意や拒否をすることを指す「インフォームドコンセント」という概念が海外から入り普及しました。重視されるのは、医師が一方的に患者に医療を施すのではなく、医師と患者が十分なコミュニケーションをとり、患者が納得して治療方針に同意できる環境をつくっていくことです。患者の知る権利や、自己決定権を尊重した関係を実現しよう、というのがインフォームドコンセントです。

一方、現実にはなかなかこのインフォームドコンセントが成立するのが難しい場合もあります。疾患や治療に関する基礎的な知識の差があり、前提とする知識がない中で患者が自分の治療に関して100%理解するのは難しいからです。そんな時、利用できるのがセカンドオピニオンです。

 

なぜセカンドオピニオンが有効なのか?

セカンドオピニオンには、今受けている治療方針に対して不安や疑問を持っている場合、

  • 同じ治療方針を提案されたとしても、他の医師の意見を聞くことで理解が深まったり、安心できる
  • かかりつけ医では行っていない治療の方法を知ることができ、選択肢が増える
  • かかりつけ医には聞きにくいことも相談しやすい

などのメリットがあります。精神疾患に関することは、インターネットで検索しても不確かな情報も多く、他の患者の体験談なども参考になる部分もあれば自分とは違う背景や症状があってそのまま参考にはしづらいこともあるでしょう。
セカンドオピニオンでは、専門の医師に意見を求めることでその不確かな部分、不安な部分を相談することができ、得られた情報を元に今後どんな医療を受けたいのか、受けたほうがいいのか自分で判断する材料にすることができるのです。

 

セカンドオピニオンを受ける際の流れ

うつ病の治療が長引く場合、セカンドオピニオンという選択もあり?

紹介状(診療情報提供書)を持参した上でのセカンドオピニオン

セカンドオピニオンは、かかりつけの医療機関での治療経過や治療方針を元に、今後の治療として意見を聞いていきます。

まずは、主治医にセカンドオピニオンを受けたい旨を伝え、治療経過が分かる「診療情報提供書」を準備してもらう必要があります。この診療情報提供書がなければ、セカンドオピニオン先の医療機関には、これまでの治療経過を全部自分で伝えなればならず、正確な情報を説明することができない可能性があるので、準備して持参しましょう。

セカンドオピニオン先の病院は、自分で探すか、主治医に相談すると病院を紹介してもらえる場合もありますので、そこも含めて相談してもよいでしょう。

セカンドオピニオン先の病院には、予約をして相談に行きます。相談時間は30分~1時間ほどが一般的で、相談内容も事前にメモにまとめていくとよいでしょう。医療の分かりづらい話も出てくるかもしれませんし、客観的に情報を集めるために家族など信頼できる人と一緒に受診するのもおすすめです。

初診として他の医療機関を受診する場合

一方、わざわざ主治医に相談して診療情報提供書を準備してもらって他の医療機関を受診するのは気が引ける・・という場合もあるかもしれません。本来これまでの治療経過を共有した上で今後の治療方針も考えることができるのが望ましいのですが、著しく主治医との信頼関係が持てない場合などは、主治医に相談せず他の医療機関を受診したい、ということもあるでしょう。

このような場合は、自身で受けたい医療機関を探し、受診の際も「相談」ではなく「初診」なので、これまでの経過や治療についての説明などは最初から全てご自身で行うことになります。

 

セカンドオピニオンの費用について

主治医に相談した上で、診療情報提供書を持参してのセカンドオピニオンは、正確にいうと「診察」ではなく「相談」という扱いなので、健康保険の適用外です。料金は医療機関によってまちまちで、1~5万円と幅がありますでので受診したいと思う医療機関に問い合わせてみてください。

一方、主治医に相談せず他の医療機関を受診する場合は、健康保険を利用して初診で受診します。私費診療となるセカンドオピニオンに比べると自己負担は軽くなります。

 

セカンドオピニオンを受ける際の注意点

うつ病の治療が長引く場合、セカンドオピニオンという選択もあり?

今この記事を読んでいただいている方は、セカンドオピニオンを実際に受けることを検討されていらっしゃる方もおられるかもしれません。セカンドオピニオンを受けたい、と思う理由は何でしょうか?

例えば、それが

  • 主治医に不満があり、他の医師に変えたい
  • 今の治療方針以外のもっと良い治療方針を示してほしい

というものであれば、それはセカンドオピニオンでは解消されないかもしれません。セカンドオピニオンは転院ではなく相談です。また、今の診断名や治療方針に納得がいっていなくても、セカンドオピニオン先の医師も同じ診断名や治療方針を提案される可能性もあります。そのような前提を理解した上で、それでも自分が納得するためにセカンドオピニオンを受けたい、という場合には役に経つでしょう。

また、セカンドオピニオンを受けたいと主治医に相談すること自体を躊躇する、という場合もあるかもしれません。精神疾患には患者の不安も強く、セカンドオピニオンを受けたいという気持ちを伝えても耳を傾けてくれる医師は多いはずです。また、セカンドオピニオンを受けたいという気持ちが出てくるということは、今受けている医療の治療方針や主治医との信頼関係に不安がある、とも言い換えられます。

そのような不安があるのであれば、その懸念点が解消できるように主治医と話してみることが大切です。診療時間が短く相談が難しい場合は、看護師、精神保健福祉士や心理士などのスタッフに心配事を話してみるのもよいと思います。それができれば、案外不安が解消されて、セカンドオピニオンを受ける必要がない、と感じることもあります。

逆に、そのようなコミュニケーションをとった上でも不安が残る場合は、他の医療機関に相談すべき時かもしれません。同じ精神科と標榜していても得意としている疾患や治療は医師によって全く違いますので、ご自身が相談したい内容はどんなことなのか整理し、その話ができそうな合った病院を探しましょう。例えば、ずっとうつと診断されていたけど自分では発達障害の疑いもあるのではないか・・と思った場合は、発達障害の治療を専門的に行っている医療機関を選ぶ、という具合です。

セカンドオピニオンや他の医療機関での診断を受けたとしても、受けただけでその後自分が納得する医療を受けられるとは限りません。心の体力が必要なことですが、自分が受ける医療のことを普段から主治医とよく話しましょう。その上でセカンドオピニオンを受けることで、より自分が納得できる医療を受けることができます。

 

まとめ

セカンドオピニオンについて解説してきましたがいかがでしたか?
うつ病は治療の経過が長く、診断も容易にすぐできるものではないため、治療を受けている過程で不安になることも多いと思います。
セカンドオピニオンは相談することに手間もかかりますが、自分が納得した医療を受けるためには有効です。不安があるからとすぐに他の医療機関を受診し、満足できなければまた変える…ということをしすぎてはドクターショッピングになってしまい治療が適切に進まないのでおすすめできませんが、ご自身の医療に対する納得感も大切です。

不安になった時にはセカンドオピニオンという手段もあるんだなと知っておき、いざとなった時に活用できるようにしてみてください。