うつ病とセロトニンの密接な関係とは?知っておくことで予防は可能?

リハビリ中の方
うつ病
セロトニン
2021/7/12
2021/7/8

うつ病の要因の1つとして、脳の神経伝達物質の減少(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)が指摘されています。
その中でも今回は、脳の様々な働きをコントロールし、“脳の指揮者”とも呼ばれているセロトニンをテーマに考えていきたいと思います。

 

セロトニンとは?

はじめにセロトニンとは何かを考えていきましょう。セロトニンは、“脳の指揮者”とも呼ばれており、脳の様々な働きをコントロールする役割があります。

厚生労働省では、“セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで、ドパミン(喜び、快楽)、ノルアドレナリン(恐怖、驚き)を制御し、精神を安定させる働きをする。セロトニンが低下すると、これら2つのコントロールが不安定になりバランスを崩すことで、攻撃性が高まったり、不安やうつなど、精神症状を引き起こすと言われている。”と説明しています。

 

 

うつ病とセロトニンの関係

次に、セロトニンとうつ病の関係について考えていきたいと思います。
私たちの脳の中では、得た情報を各部位に伝達するために様々な神経伝達物質が働いています。そのうちのセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンはモノアミンと総称されており、このモノアミンが減少することがうつ病の要因の1つと考えられています。

その中でも、セロトニンは、上記の通り睡眠・覚醒リズムの調整に重要な役割を担っています。
セロトニンとうつ病の関係について考える前提として、睡眠に関与するホルモン“メラトニン”について知っておくと良いでしょう。メラトニンは、外界からの光刺激によって体内時計が刺激されてから約15時間後に分泌されます。

このメラトニンは、昼間は分泌が抑制され、夕方促進されるというように、1日の中で分泌量が変動しています。この分泌量の変動によって、睡眠と覚醒のリズムを作っています。そして、このメラトニンの分泌に必要な原料がセロトニンであり、セロトニンが十分に分泌されていないと、睡眠と覚醒のリズムが乱れてしまいます。

これにより、睡眠の質が下がり、入眠困難や中途覚醒といった、うつ病でみられるような症状が引き起こされると考えられています。

セロトニンの減少がうつ病の要因の1つと考えられていますが、セロトニンが不足する要因は私たちの生活習慣が大きく影響しています。セロトニンが不足する要因として、昼夜逆転の生活や、栄養バランスの偏った食事、運動不足が挙げられます。

 

 

日常生活でセロトニンを増やす方法はあるのか?

では、実際にセロトニンを生成するために、どのように1日を過ごしたらよいのでしょうか。これは、前項で少し触れたセロトニンが不足しやすい生活習慣を整えていくことが必要となります。

セロトニンを生成するために考えたいことは、

    1. セロトニンを分泌する神経(セロトニン神経)を活性化させること
    2. セロトニンを合成するための材料を摂取すること

です。

【1】から見ていきましょう。
セロトニン神経を活性化させるためのキーワードは、「朝日を浴びる」「リズム運動」です。
私がおすすめしたい活動は“朝の散歩”です。朝の散歩は、「朝日を浴びる」「リズム運動」(ウォーキングなどの規則的なリズムを刻む運動)の二つを兼ねているので、セロトニン神経を十分に活性化させることができます。また、朝起きる時間を固定化させることもできるので、生活リズムも整います。

では、散歩の具体的なポイントをお伝えします。

①起床してから1時間以内(午前中)に行うこと
上述したように、セロトニンは、睡眠を誘発するメラトニンの原料となっています。そして、メラトニンは日光を浴びてセロトニンを生成してから、およそ15時間後に分泌され、睡眠を誘発すると言われています。つまり、朝の散歩の時間が遅れることで、メラトニン分泌の時間が遅れてしまい、眠気が発生する時間が遅くなってしまうのです。

 

②15~30分程度に収めること
ストレスフリー超大全の著者である精神科医の樺沢紫苑先生は、30分を超えるとセロトニン神経が疲労してしまい、逆効果であると説明しています。

 

③サングラスはかけないこと
セロトニン神経が活性化するためには、ある程度の光を目から取り入れる必要があります。サングラスをかけてしまうと、必要な光量を取り入れられなくなってしまいます。

光を直視する必要はありませんので、サングラスをせずに外に出てみましょう。
また、曇りや雨の日でも十分な効果が期待できますので、ぜひ取り組んでみてください
ここで私の実践している例を紹介したいと思います。朝の通勤を利用することです。
私は通勤時に敢えて日の当たるところを歩いています。自宅の最寄りの駅と職場の最寄り駅になるわけですが、時間にして20分くらいになります。これだけでも効果が期待できると思います。

それでも難しい方はまずは朝起きてカーテンを開けてみる、ベランダに出て日を浴びる、5分だけ歩いてみる、週2日やってみるなど、徐々に段階をあげていくことが習慣の獲得につながっていくと思います。

熟眠を取るために厚手の遮光カーテンを用意する方がいますが、逆効果になりますのでやめましょう。就寝時間が夜9時から朝8時の間に該当する方は、むしろ、窓際にベッドを配置し、朝日を浴びられるようにすることをお勧めします。ただし、看護師などの夜勤勤務があり、日が出ているときに睡眠をとる必要がある方はこの限りではありませんので注意して下さい。

 

続いて【2】についてです。


【1】の朝の散歩でセロトニンをたくさん分泌する体制を整えましたら、次はセロトニンの材料に注目しましょう。セロトニンは、トリプトファンという材料から合成されます。
このトリプトファンは、体内では生成されない良質なたんぱく質を食事から摂取する必要があります。トリプトファンを豊富に含む食材として、果物や大豆・豆製品、乳製品などが挙げられます。
また、トリプトファンをセロトニンに変換するには、ビタミンB6が必要です。これは、玄米、小麦胚芽、牛、豚、鶏のレバーマグロの赤身などから摂取することができます。患者さんには、手軽に食べることができる朝食として『バナナと牛乳』を提案しています。

 

睡眠薬について

巷のドラッグストアやテレビCMでも睡眠薬の情報をよく目にするようになりました。
生活リズムが乱れていたり、暴飲暴食、過度な飲酒をしたりしている方は、睡眠薬の使用には注意し、まずは生活を整えましょう。そのうえで、休養が必要であれば睡眠薬を使用することも良いでしょう。主治医や薬剤師、支援者に相談してみましょう。

 

まとめ

今回は、セロトニンとうつ病の関係、セロトニンを分泌させるための仕組みについて考えました。生活習慣の乱れによりセロトニンの分泌が減少し、セロトニンの減少により睡眠・覚醒のリズムが崩れ、生活習慣が乱れるという悪循環にあると思います。

表題にもありますが、セロトニンの増加に関しては、予防的に自分でできることがあります。睡眠・覚醒のリズムを見直すには、朝の活動がとても大切です。
少しずつできることから始めてみましょう。