知っておこう、企業が障がい者雇用をする理由とは?

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障碍者雇用
2021/8/20
2021/9/3

企業における障害者雇用は、法定雇用率が2021年3月1日から2.3%に引き上げられ、今後もますます注目されていくような社会的な流れがあります。

そもそも、企業はなぜ障害者雇用をするのでしょうか。

ここでは企業の立場で障害者雇用をする理由や、障害者雇用が企業にもたらすメリットについて見ていきましょう。

 

 

現在の日本における障害者雇用の現状とは?

令和2年 障害者雇用状況の集計結果によると、民間企業(45.5人以上規模の企業:令和2年の法定雇用率2.2%)に雇用されている障害者の数は約57万人で、17年連続で過去最高となっています。

中でも、平成30年から、障害者雇用義務の対象として精神障害者が加わったことから、精神保健福祉手帳を持つ障害者の雇用数が急速に伸びています。

法定雇用率を達成している企業の割合は48.6%で、半数以上の企業がいまだに法定雇用率未達成の状況ではありますが、企業における障害者雇用への注目はとても高くなっています。

背景には、少子化に伴う労働人口の減少が進んでいく中で、人材確保のため多様な人材を採用したいと考える企業が増えているためです。障害者雇用に限らず、女性の管理職登用やSDGsの広まりで企業の社会的役割が注目されています。

また、IT技術によって急速にグローバル化が進んでおり、国内だけではなく、海外も含めた国際的な競争が進んでいて、多様な人材の価値観やスキルを活用することで、企業の価値や競争力を高めようという取り組みも進んでいます。

つまり、障害者雇用も戦力として企業に求められているといえるでしょう。

最近では、障害者を直接サポートする就労支援だけではなく、障害者雇用専門の人材紹介会社、求人媒体、障害者雇用コンサルティング会社など、企業の障害者雇用をサポートするサービスも多く出てきました。

公的なサービスも存在し、例えば各都道府県に配置されている障害者職業センターは、障害者と企業、両方をサポートし、企業にジョブコーチを派遣して実際の採用~定着まで密にサポートしています。

 

 

障害者雇用促進法による取り決め

法定雇用率制度

障害者雇用は、「障害者雇用促進法」という法律で定められています。
全従業員に対する身体障害者・知的障害者・精神障害者の雇用割合を「法定雇用率」以上にする義務がある、というものです。

具体的には、民間企業の法定雇用率は現在2.3%で、従業員を45.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならないと定められています。今後も法定雇用率は5年に1度の見直しがされ、上がっていくことが想定されています。

障害者雇用納付金制度

障害者を雇用した企業は、障害者が働きやすいように、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備などが必要となるため、障害のない人を雇用するケースに比べて経済的な負担を伴うことがあります。
そういった障害者雇用のサポートをするために「障害者雇用納付金制度」があります。

法定雇用率を達成していない場合に、常用労働者が100人を超える企業から「障害者雇用納付金」(1人当たり月額50,000円を申告と同時に納付)を徴収する、というものです。

この給付金を元にして、法定雇用率を達成している企業には、調整金や報奨金が支給されます。また、企業が作業施設や設備の設置などについて高額な負担をした場合には、その費用に対して、支給される助成金の制度を活用できます。

 

 

企業側のメリット

企業が障害者雇用をすすめる際のメリットは、法定雇用率を満たすことで社会的な信用が高まる、障害者雇用納付金を受け取れること意外にもたくさんあります。

それは、障害者雇用を進めるために、さまざまな側面で企業のあり方、業務の進め方などを大きく見直すことで、既存の社員同士のコミュニケーションが活発になり、風通しが良くなったり、業務の効率化が進みより、より働きやすい環境が整うきっかけになったりすることです。

障害者雇用では採用した障害者に対して、何らかの合理的配慮をするために、職場の環境や業務の工夫をする必要があることが少なくありません。

一見、それは企業にとって非常に負担になるようなものですが、 普段の業務の進め方の見直しになり、余計な業務工程に気づき、省いたり、より効率的な方法に変えたりするきっかけになります。

また、障害者雇用を、ただ雇用することを目的にせず、戦力として考え採用できる企業では、社員の強みで業務を役割分担することで、既存の社員が他の業務に集中できる時間を確保することにもなります。

合理的配慮に関しても、他者を気遣う、気にかける優しいコミュニケーションの促進になります。そもそも配慮や気遣いというのは、障害があるなしにかかわらず社会の中で誰もがお互いに行っていることですし、それが職場の空気になっていくということも、既存の社員にとってもプラスの影響がある変化です。

中には、障害者雇用がきっかけでフレックスタイム制や相談室が導入されるなど、どの社員にとっても働きやすい環境が整っていくきっかけにもなった企業もあります。

 

 

まとめ

今後も、企業における障害者雇用のあり方は推進され、社会の流れの影響を受けて変化していくでしょう。障害者雇用をまだやったことがない、まだ慣れていない企業もたくさんあり、企業側も試行錯誤していることも多いです。

まだまだ企業のダイバーシティの実現は道半ばですが、熱意を持って取り組む企業もたくさんあり、障害者雇用は必ずしも負担ではなく、戦力にしていけるかは取り組む会社次第で大きく違います。

企業が頭を悩ませるのは、障害者雇用のあり方に決まった正解はなく、1つ1つの企業によってそれぞれだからです。

企業の規模や事業内容、会社のビジョンや文化によって、障害者雇用に求めるもの、実現できることは違います。多くの企業が、自社でできる、自社らしい障害者雇用の実現を模索しています。

障害者雇用が進んでいるモデルケースと企業もありますので、障害者雇用を検討して就職・転職活動する場合には、企業がどのような取り組みをしているのか、という視点でも情報収集をしてみてください。

企業の視点に立って考えることで、うまく自分の力を発揮して働くヒントも見つかるかもしれません。