うつ病で休職した人は職場復帰より転職がオススメな理由

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2021/2/17
2021/7/12

労働環境に馴染めずメンタルを崩してしまう方が増えた昨今、精神科を受診する方やSNSなどで「うつ病で休職をした」という声が散見されます。うつ病休職者の多くは社会復帰を目指すにあたり「職場復帰支援」を受ける人が多いように思えますが、実は職場復帰より「転職」のほうがオススメです。この記事では『職場が原因でうつ病と診断された』という前提で、うつ病で休職したときは転職がおすすめな理由を解説します。

うつ病休職者の職場復帰と転職の状況

まず、うつ病で休職した人の職場復帰はどのような状況なのか見てみましょう。以下のグラフは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者職業総合センターが2016年にまとめたデータです。精神障害者を雇用した経験の有無による職場復帰状況が見て取れます。

うつ病で休職した人は職場復帰より転職がオススメな理由 【出典】独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター調査研究調査報告書

「現在精神障害者を雇用」に該当する会社に復帰した精神障害者が最も安定して就労しているのはグラフの通りです。つまり、障害者雇用経験のある職場(福祉政策に理解のある企業)ほど職場復帰できる可能性が高いということです。

では、転職した場合の理由についても見てみましょう。以下のデータは精神障害者以外も含まれますが、障害を持つ方が会社を1年未満で離職した理由に関する調査結果です。

うつ病で休職した人は職場復帰より転職がオススメな理由 【出典】独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター調査研究調査報告書

 

3か月以内に退職した障害者に最も多いのが「労働条件が合わない」「業務遂行上の課題がある」という理由です。対して、3か月~1年未満では障害や病気を理由に離職している人が最も多いという違いが見られました。この結果を見る限り、労働環境さえ問題なければ安定した就労に繋がる可能性があると推測できます。 

うつ病に対する職場復帰の体制と現状

次に、障害者雇用の体制が整っているかどうかを加味しない、企業全体の「メンタルヘルス不調による休職者の職場復帰状況」を見てみましょう。

以下は「メンタルヘルス不調で1か月以上休職した社員が職場に復帰し、安定的に働き続けられる割合は概ねどの程度か」という質問に対する回答結果です。

 

うつ病で休職した人は職場復帰より転職がオススメな理由 【出典】独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター調査研究調査報告書

「ほとんど安定的」「半分以上は安定的」を合わせると40.5%でそれ以外の回答(無回答を除く)は47.2%です。大きな差はありませんが、安定的に職場復帰を果たしたメンタルヘルス不調者は半数にも満たないことが分かります。

上記の結果と先述した「精神障害者の雇用経験の有無で職場復帰の状況が変わる」という事実を加味して考えると、大事なのは「企業側の受け入れ体制」と言えるのではないでしょうか。

では、企業側のうつ病などの精神障害者に対する受け入れ体制の実態に関する調査結果を見てみましょう。少し古いですが、2012年に「独立行政法人労働政策研究・研修機構」が調査したデータがあります。

 

 

 

うつ病で休職した人は職場復帰より転職がオススメな理由 【出典】独立行政法人労働政策研究・研修機構メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査

これを見ると、職場復帰プログラムを導入している企業は全体の12%にもならず、多くの企業がメンタルヘルスへの理解があるとは言えない結果となっています。最新の障害者雇用率制度などの厳格化を考えると、多少は改善されていると思われますが、企業の障害者雇用に対する配慮はまだ十分とは言えないでしょう。 

うつ病による「職場復帰」と「転職」のメリットデメリット

ここまでのデータを見る限り、企業側の精神障害者の受け入れ体制が構築されていないのであれば、やはり職場復帰よりも転職を選択するのが良さそうです。その理由を職場復帰と転職のメリットデメリットを踏まえてまとめてみましょう。

  メリット デメリット
職場復帰 ・今まで通りの慣れた業務に復帰できる
・同僚や上司などと面識のある人がいる
・うつ病への配慮や社内体制が無い可能性
・職場復帰しても再発の可能性がある
・そもそも人間関係や職場の空気が再発のトリガーになりやすい
・配属が変わるなどの可能性
転職 ・人間関係も含めて全てリセットできる
・経験やスキルを活かせる
・ITの進歩により企業と障害者のマッチングがしやすくなった
・障害者枠で募集する企業も多い
・職場や仕事に慣れるまで時間がかかる
・不安感などでうつ病が悪化する可能性

他にもメリット・デメリットとなり得る事由はありますが、特に注意すべきなのは「うつ病の再発・悪化」です。職場復帰の場合、企業側がうつ病を受け入れる体制を整えるのを待っている間に症状が悪化する可能性もあります。当然、必ずしも企業が障害者雇用に向けて積極的に取り組むとは言い切れません。もし今の職場復帰にこだわるならば、まずは心療内科の医師などに相談しつつ、行政の福祉サービスも利用しながら慎重に職場復帰を進める必要があると言えるでしょう。 

うつ病で休職したら転職するのがベストな3つの理由

結論から言うと、「うつ病で休職したなら職場復帰ではなく転職を選んだ方が良い」と言えます。その理由をここまでの解説を踏まえてまとめてみましょう。

  1. うつ病になった原因となった職場に、再発リスクを抱えてまで戻る必要がない
  2. 転職をすれば確定している原因からは逃れられる
  3. 転職の際により自分の適正にあった仕事のマッチングが考えられる

転職のメリットにも挙げたように、障害者枠を設ける企業も増えています。よって、うつ病で休職したなら障害者雇用への理解がある企業に転職したほうが安定的な就労に繋がる可能性が高いのです。うつ病の原因になったかもしれない元の職場が障害者への理解を深めるまで待つ必要はありません。

もちろん全てが完璧で障害者雇用に関して何の問題もない企業はほとんどないでしょう。しかし新しい職場なら、うつ病になった直接的な原因が無くなるという事実だけでも、精神障害者にとっては大きな光明となります。

無理に職務への責任を果たそうとする必要はありません。うつ病などで休職中の方は自分の状況を鑑みて、障害者雇用に理解のある企業への転職も検討されてはいかがでしょうか。