発達障害の方向け就労移行支援施設では、実際にどんな支援を行っているか?

復職をお考えの方
就労移行支援施設
発達障害
2021/3/25
2021/4/26

発達障害の方向け就労移行支援施設では、実際にどんな支援を行っているか?

はじめに

発達障害がある方が利用できる就労支援には、ハローワークが提供する就労準備プログラムや、地域障害者職業センターによるリハビリテーション、就労・生活両面から相談できる障害者就業・生活支援センターなどがありますが、その中でも最大2年観間かけてじっくり少しずつ就職に向けた準備を進めていける制度として「就労移行支援」があります。全国に3500か所以上あります。
H18 社会福祉施設等調査:結果の概要より

 

就労移行支援施設とは

就労移行支援事業所とは、一般企業での就労をめざす障害や疾患のある人(65歳未満)を対象に、国が定める障害者総合支援法に基づき、就職前から就職、就職後の職場への定着までの過程を一貫してサポートする福祉サービスです。最長2年間の利用ができます。

就職に必要なスキルやビジネスマナー、PCスキルなどの職業訓練や、企業での体験実習、面接への対策などの就職活動のサポートなどを受けることができます。就職後には、職場にスムーズに定着するための「就労定着支援」もおこなっています。

利用方法としては、お住いの行政窓口(保健所の障害福祉課など)に就労移行支援を利用したい旨を伝えて、障害や疾患が把握できる診断書や障害者手帳等の必要書類を用意してから受給者証の申請をおこないます。障害者手帳がなくても利用できたり、自治体によっては休職中でも利用できるケースもあります。

 

どんな方が対象か?

就労移行支援事業所は、「障害福祉サービス」の1つで、身体障害、知的障害、発達障害、精神疾患、難病などにより就労に対してリハビリテーションが必要な方が対象となります(実際にサービス受給者証の給付対象となるかは、行政窓口で申し込み後審査があります)。

また、事業所によっては、どんな障害の方でも受け入れているところもあれば、「発達障害支援経験者が在籍しています」等、特定の障害特性がある方の支援を得意している事業所もあります。実際に利用する際には、事前にホームページで調べたり見学に行くなどして確認をしてみましょう。中には、発達障害の特性に合わせて集中できるように仕切りのあるブースがあったり、机が窓向きになっているなどの工夫がされている事業所もあります。

利用される方は、実際に働いた経験がほとんどない方もいらっしゃれば、社会人経験があり、休職や退職されるなどして利用される方もいらっしゃいます。

 

実際の支援内容の例

① 働いた経験がない、もしくは少ない方の例

就労移行支援事業所には「プログラム」という就労に関して必要なスキルを学習できる機会があることが多いです。
一般的なビジネスマナーや、就職活動に関する自己分析、自身の障害についての向き合い方や体調の整え方といったことを学べます。また、就労訓練の過程で出てくる不安などの相談についても専門のスタッフについて相談できるでしょう。

すぐに就職活動を始めるわけではなく、上記のような学習を進めながら、実際に企業で仕事の体験をする「職場実習」ができることもあります。実際の仕事場面に近い環境を体験することによって、自分の仕事の得意不得意、どんな環境が合うかなどを試せる機会となり、実習先の企業担当者や移行支援事業所スタッフからフィードバックをもらえることもあるでしょう。

就職活動を進めていく段階では、履歴書・職務経歴書作成のサポートや、採用面接の練習をすることもできます。採用面接にも支援者同席の下臨むことができる場合もあり、希望すれば就職後も職場定着支援として月1回の面談などを通して続けてサポートを受けることができる制度もあります。

事業所によっては、デザインなど一定の特化したスキルを学ぶ機会があることもあります。

 

②休職や退職後、復職に向けて利用する方の場合

働いている途中に発達障害の二次障害のような形で、適応障害やうつなど体調不良となり、休職・退職され、復職に向けて利用されるケースもあります。
基本的な就労訓練の進み方は、①の場合と同じですが、体調を崩した影響などが残っている場合もあり、生活リズムを整えて、毎日ではなく決めた目標の日数から徐々に通所をスタートすることもあります。

復職や再就職の場合は、前回の職場でどのようなことが上手くいったか、逆に自分にとっては合わなかったか、などより自分の経験を踏まえて、次仕事を始めた時はどうしていくかという見通しをたてていくことも大切です。

例えばスケジュール管理が苦手という場合、メモの取り方やスケジュールの活用の仕方、スマートフォンのリマインダー機能の使い方の訓練など、必要な訓練が分かり、それを実行していくことができます。

こういった具体的な就労訓練の内容も、支援者の力を借りながら整理していくと、どういった環境や仕事のスタイルが自分に合うか整理していくことができるでしょう。

 

上手く利用するには?

発達障害の方向け就労移行支援施設では、実際にどんな支援を行っているか?

就労移行支援事業所を利用すると、3か月に1回、目標に向かってどのような訓練をおこなっていくか目標と具体的に取り組むことを設定する時間があります。これを「個別支援計画」といいますが、この計画を立てるために事業所の支援スタッフと定期的に相談する時間があります。

その際には、自分が困っていること、望んでいることなどを遠慮なく伝えるようにください。日々の生活や訓練の中でも、疑問に思うことや不安なことは紙に書いておくなど自分なりに考えをまとめ、それを支援スタッフに伝えると、もっとやりやすい方法を一緒に考えたり、次に取り組むことにも生かしやすくなります。支援スタッフからのアドバイスを待つだけではなく、主体的に考えるのがポイントです。それでも難しい部分は、遠慮なく支援スタッフを頼りましょう。

最初は支援スタッフに相談する、頼る、ということに遠慮してしまうこともあるかもしれませんが、実際に上手にSOSが出せるように、また自分の意見を適切に伝えられるようになると、その後の就職の場面でも非常に役に立つでしょう。

 

まとめ

就労移行支援は比較的じっくりと時間をかけて就労に向けて準備をしていける施設です。すぐに就職したい、という方には就労移行支援事業所よりもハローワークの障害者窓口の方が良いといった場合や、特定のスキルだけ学びたいという方は、職業訓練を受ける方が合っている、という場合もあるかもしれません。
また、就労移行支援事業所の中でも運営している会社や拠点によってサービスの特色や雰囲気がまったく違うこともあります。

どの支援を利用する際にも、「今自分にはどんな支援が必要か?」ということを主治医や事業所の支援者にもしっかりと相談し整理しておけると利用してみて「何か違うな…」ということも避けられます。
実際に利用する場合は実際に事業所を訪問し、見学するなどして確認してみてください。