若い世代で増加傾向にある非定型うつ病とは?

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2021/10/20
2021/10/15

若い世代で増加傾向にある非定型うつ病とは?

うつ病には、複数の種類があることをご存じですか?

一般的に「うつ病」と呼ばれているのは、「定型うつ病」と呼ばれ、数週間から月単位で気分が落ち込み、食欲がない、不眠になるなどの症状が出ます。

しかし、現在若い世代では、「非定型うつ病」と呼ばれる定型うつ病の診断基準には当てはまらないうつ病がよく聞かれるようになりました。

ここでは、非定型うつ病とは、どのような疾患なのかみていきましょう。

 

非定型うつ病とは、症状は?

非定型うつ病は、時代の変化によってうつ病の症状が多様になったことで出てきたもので、非定型うつ病の一部は「新型うつ」とも呼ばれています。以前は敷居の高かった心療内科やメンタルクリニックへの受診がしやすくなったことから診断される数が増加していると言われています。

非定型うつ病は、従来のうつ病(定型うつ病)と比べて、症状も人によって異なるのが特徴です。

状態が悪いときには、定型うつ病と同じように気分が沈み、動けなくなることがあります。睡眠障害(夜中に目が覚める、過眠になる)や、食べ過ぎてしまう、夕方~夜にかけて調子が悪くなるといった症状もあります。

また、非定型うつ病の特徴として、楽しい出来事があると調子がよくなり取り組めるという「気分の反応性」があります。誰でも、良いことがあり気分が良くなる経験はあると思いますが、非定型うつ病の場合は、その気分の変化がとても極端になります。

自分に好ましい出来事があると、気分が軽くなり動けるようになる。

しかし、逆に少しでも嫌なことがあると、気分が落ち込み、動けなくなってしまいます。対人関係に敏感で、うつ病になった原因を自分以外の何かに求めることが多いです。

この気分の反応性は、非定型うつ病の症状であり、本人が自分の意思でコントロールできるものではありませんが、周囲から見ると「わがまま」「甘えだ」などと勘違いされてしまいやすい病気です。

イライラや不安感が強く、しばしば感情のコントロールがきかなくなったり、あるとき突然、理由も無く涙が出てくるという訴えもよくあり、本人にとっても大きな困りごとです。

 

今までのうつ病と非定型うつ病は何が違うのか?

若い世代で増加傾向にある非定型うつ病とは?

今までのうつ病(定型うつ病)と非定型うつ病に共通するのは、うつ病としての基本症状である気分の落ち込みと意欲の低下です。どちらのうつ病にもこの症状は表れますが、表れ方が違います。

定型うつ病の場合は、気分はずっと沈んだままになりがちで、時間をかけて気分が上がっていくよう治療も進められます、

非定型うつ病は、その時々の状況に左右され、良いことがあれば気分が上がり、嫌なことがあるとうつ状態になります。これは気分の反応性によるもので、定型うつ病には見られません。

他にも、睡眠、食事、疲労感など共通する症状の項目がありますが、症状の内容が正反対に出ることもあるのです。

睡眠は、定型うつ病では、眠れない、熟睡できないという不眠の症状が中心です。非定型うつ病では、寝すぎる、起きられないという過眠の状態になります。

食事は、定型うつ病では、食欲がなくなり痩せてしまうことが多いです。非定型うつ病では、甘いものを中心に過食となり、体重は増加しやすくなります。

疲労感は、定型うつ病の場合は、だるさが強くなり、気力がない、と表現されます。非定型うつ病では、気分が落ちている時には手足が鉛が入っているように重く感じるようになります。

 

非定型うつ病にはどんな人がなりやすいのか?

若い世代で増加傾向にある非定型うつ病とは?

非定型うつ病と診断されるのは、圧倒的に若い女性が多いと言われています。

人に対して過敏で、元々不安を抱えやすい気質を持っている方が多いです。
自分に自信がなく、周囲の目を気にして自己主張をあまりせず、むしろ他者への貢献をよくする人であることも多いです。

そうした人が、非定型うつ病を発症し、特に気分の反応性による好きなことなら動ける、などの行動によって「わがままだ」と思われてしまうのです。

学生時代から人の批判や冷たい態度に弱く、周囲の空気を読みよい子と他者から認められてきたことで、「他人から評価されたい」「恥をかきたくない」といった気持ちを持っていることが多いですが、社会に出ると対人関係や仕事の中で、自分の思うようにはいかず、精神的な葛藤を引き起こしやすくなります。

例えば、ミスで注意を受けたり、思うように仕事の成果を出せなかったりして、それを自分では抱えきれずに、周りの責任にして自分は悪くないと考えてしまいがちです。

 

非定型うつ病の治療法とは?

若い世代で増加傾向にある非定型うつ病とは?

非定型うつ病の治療は、生活リズムを整える・薬物療法・認知行動療法・デイケアなどの方法があります。

生活リズムを整えることがとても重要とされ、通常のうつ病では推奨されない励ましが効果的な場合もあります。生活リズムを整え、仕事に行くように背中を押すこともあります。

薬物療法としては、突然涙が出てしまうという不安に対する薬や、抑うつに効果のある薬が処方されます。

認知行動療法では、人への敏感性に対して、マイナス思考を改めていく力をつける、行動を適切な方向へ軌道修正していく力をつける、自分で自分の気持ちを把握できる力をつける、などの取り組みがなされます。

デイケアでは、多様な人と触れ合いながら、その場で自分は受け入れられている、という感覚を得て、人と接する自信を持ち、嫌な事があっても受け止められる様に変化していくことを目標にしていきます。

 

まとめ

非定型うつ病は、従来のうつ病よりも軽く見られがちですが、本人にとって非常につらい症状であり、しっかりと治療や療養をする必要がある疾患です。

人への他責傾向や過敏性は、裏を返せば「自分に自信がなく、不安が強いために自分の良いところを見いだせず、ストレスを自分の力で乗り越えることができない」ために出てくるものです。

服薬など医療の助けを借りながら、自分自身が元々持っている考え方や対人スタイルを、より楽に生きられる方向に変えていくことが大切です。

誤解されやすくい疾患でもあり、理解不足によってより苦しんでしまうこともあります。非定型うつ病と診断された場合は、本人だけではなく家族や身近な人も、疾患を正しく理解し、必要な休養や医療を受けられるようにしましょう。