うつ病になったら友人や会社に伝えるべきか?

自分の症状を知る
うつ病
伝え方
2021/6/10
2021/6/7

うつ病になったら友人や会社に伝えるべきか?

うつ病は、誰にでもなる可能性がある病気です。

うつは心の風邪と言われ、それくらい一般的になっていますが、目に見えにくい精神疾患への誤解や理解不足はまだまだあります。

それは社会にもあり、私たち個人の中にもあるものです。特に自分がうつと診断されたときに、大きな衝撃となることもあるでしょう。

受け取り方は人それぞれで、やっぱり疲れていたのか、と診断が出たことでホッとする人もいれば、自分がうつと診断されるなんて、とショックを受ける人もいます。

戸惑いやショック、悲しさ、辛さ、時には恥ずかしいような気持ちになり、周囲にどう伝えるか悩む人も多いでしょう。

今後、病気と付き合いながら仕事や生活をしていくと考えると、周囲に頼れる人がいた方が、その後楽になる場合が多いです。この記事では、うつ病になったとき、病気のことをどのように周囲の人に伝えたらよいのか、見ていきましょう。

 

うつ病と診断されたら周囲に伝えるべきか?

うつ病になったら友人や会社に伝えるべきか?

そもそもなぜ、「うつ病であることを人に伝えるべきなのだろうか…」「どう伝えよう…」と悩む場合があるのでしょうか。うつ病に限らず、精神疾患やがんなど他の重大・希少な疾患でも伝えづらい、と思うかもしれません。

伝えづらいと感じる背景は2つ考えられます。

うつ病と診断されたことを受け入れがたい気持ち

うつ病を診断されたことで治療が受けられる一方で、ショックな気持ちを抱える人も少なくありません。特に思っても見なかった病気を告げられた時、ショックを受け、否認したい気持ちが出てくる、という誰にでもある心の反応はよく知られています。

病気に対するアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)

精神疾患は、これまで偏見を強く受けてきたという歴史があります。今はうつ病という名前もかなり一般的になり状況は変わってきたと感じますが、うつ病や脳の病であり、目には見えにくい疾患で症状や背景も人それぞれであることからピンときにくく、分かりにくさ・理解不足が生じる場合があります。

また、そういった背景や状況を本人も過度に意識してしまい、「偏見を受けるのではないか」という警戒から、より伝えにくいと感じることがあります。

このように、伝えづらいと感じるのは自然なことで、悪いことでもありません。

しかし、安心して十分な休息をとったり自分のペースで過ごすためには、環境を整えることが大切です。

環境には、自分のことを分かってくれる理解者がいる、ということも含まれます。自分の安心安全のために、信頼できる人や近しい人には伝えておけるとよいでしょう。

 

伝える事のメリットとデメリット

伝えるメリット

あなたが風邪をひいたとき、周囲にそのことを伝えますか?

風邪をひくと、最初はちょっと調子が悪いかな、という感覚がするくらいですが、ひどくなって咳や鼻水、熱の症状が出てくると、「人に移すかもしれない」「身体を休めるために家事や仕事がいつものようにはできない」などの心配事が出てきてきます。

その時、同居の家族に「風邪つらいから寝ているね」とか、「食事を作ってほしい」「飲み物を買ってきてほしい」と頼むこともあるでしょう。また、仕事をしていればマスクをしたり、「早退させてください」「今日昼休みに病院受診してきます」などの報告をすることもあると思います。

基本的にはうつ病も同じです。
一般的には「まずは休んで」「しっかり療養しましょう」「ゆっくり、自分のペースで」と指示されます。治療や療養の必要性や度合いは人によって異なりますが、これまでの生活や行動、考え方などを工夫する必要が出てきます。

そうしたとき、家族や友人など近しい人には、伝えておけば、辛いとき頼ることができます。

仕事をしていれば、医師から仕事を休むよう指示があった場合は、すぐに上長に報告し休職する必要があります。

会社員であれば、休職すると仕事から離れることができるだけでなく、手続きをすれば傷病手当金という金銭的なサポートも得られます。

伝えるデメリット

まずは、自分がうつ病であるということを、受け入れがたい気持ちを持っている場合、自分のことを説明するのが辛い場合があります。

説明することで様々なサポートを受けられる反面、心理的に負担を感じるコミュニケーションになるかもしれません。

また、伝える相手との関係性や、どのような理解や反応をするか分からない点も不安でしょう。相手がうつ病の知識を持っていない場合は、病気の説明をする必要がありますし、特に体調が悪いときは骨が折れると感じると思います。

また、説明をしても病気に対する情報が適切に伝わらない場合は、「怠けているのではないか」「そんな風には見えない」など、分かってもらえない可能性もゼロではありません。

人はこれまで生きてきた自分の経験、見聞きしてきたことをベースに物事を解釈するので、難しいですが他者の考えを変えるのは難しい場合があります。

そんな時は、伝える中で信頼できると感じた人を頼り、分かってもらえないと感じてしまった相手とは少し距離をとって、自分の安心を確保していくのが良いでしょう。

 

伝えるタイミングと範囲は?

うつ病になったら友人や会社に伝えるべきか?

仕事をしている場合はできるだけすぐに、直属の上長、人事部門など会社の担当者に伝えます。

身の回りのことをするのも大変な時は、同居している人や、信頼できる友人などがいれば、早めに伝えておけると、買い出しや通院の同行など手助けしてもらえます。

初めから多くの人に伝える必要はありません。頼れる、気を許せる人、助けてくれる身近な人を頼りましょう。

 

会社への伝え方

会社へ伝える場合は、直属の上長に伝えます。会社に相談室が設置されている場合は、産業カウンセラーなどの担当者を頼るのも1つです。

休職する場合は、病院で診断書を書いてもらえますので、それを会社に提出して手続きをしましょう。基本的には会社の人事担当者が手続きを進めます。

病気や症状、今後の見通しについて説明する必要もあるかもしれません。できれば主治医の指示について事前にメモをとっておき、簡単にまとめたものを参考にして伝えたり、そのメモを上司に渡して確認してもらう方法もあります。

休職しない場合も、病気や症状、困っていること、働き方の相談などをする必要があるでしょう。伝えるときに緊張するようでしたら、話したいことを事前にまとめたメモを準備してみてください。

 

知人への伝え方

身近な知人に伝える際は、病気や症状を伝えるのと合わせて、「どうしてほしいのか」も一緒に伝えるといいでしょう。

病気に対する知識がないと、どうかかわっていいのか身近な人でも悩んでしまうことがあります。

話を聞いてほしいのか、家事など身辺の生活の手助けをしてほしいのか、そっとしておいてほしいのか、それとも声掛けをしてほしいのか、などです。

わざわざ言葉にしなくても、特に家族など身近な人には甘えることもできるかもしれませんが、周囲としても何をしてほしいか明確であれば適切なサポートがしやすいです。

回復していく過程でほしいサポートも変わってくると思いますので、変化があればその都度伝えるようにしましょう。

病気について説明することに困ったら、病院などに置いてあるうつ病を説明するパンフレットや、ウェブサイトをシェアするなどして伝える、という方法も活用してください。

周囲にうつ病の人がいる場合にどう助けたらいいのか、まとめてあるサイトもあります。

参考:https://kokoro.mhlw.go.jp/families/

 

まとめ

日本では、一生のうちに一度はうつ病にかかる人の割合(生涯有病率)は7.5%といわれていて、およそ7人に1人はうつ病を経験すると言われています。かなり多くの人が人生の中で精神的な病気を経験しているのです。こう見てみるとかなり一般的な病気ですよね。

それでも、伝えにくい、人を頼りにくいと感じる人もいらっしゃるでしょうか。

休職の必要があるなど緊急性が高い場合、職場には必ず伝える必要があります。しかし、うつ病になったことを受け止めきれない、辛いと感じる場合は、周囲に伝える前にかかりつけ医療機関の主治医やカウンセラーに頼るのもよいと思います。

周囲に伝えるのは、自分を楽にしていくためです。
自分で抱えて頑張りすぎることを手放して、生きやすい環境を少しずつ、作ってみてくださいね。