夏バテと間違えやすい夏季うつ病とは?

自分の症状を知る
うつ病
夏季性うつ病
季節性感情障害
2021/8/16
2021/8/16

夏の暑さで疲れやすかったり、なかなか寝付けず、夏バテかなと考えることもあるかもしれません。
夏バテと混同してしまいがちですが、夏特有のうつ病というものがあります。今回は、夏季性うつ病について夏バテとの違いやその対策という観点でみていきたいと思います。

 

 

季節性感情障害(夏季性うつ病)とは

みなさんは夏季性うつ病を聞いたことがありますか?もしかしたら冬季性うつ病は聞いたことがあるという方もいるかもしれません。これらは合わせて“季節性感情障害・季節性情動障害”と言います。

精神障害の診断・統計マニュアル第5版(以下、DSM-5)では気分障害圏に含まれており、季節型であると特定された反復性うつ病に分類されています。また、診断基準は、少なくとも2年間、特定の季節(冬もしくは夏)に大うつ病の基準を完全に満たされた場合に限ります。日本や欧米では、秋や冬にかけて発症し、春に治る冬季型うつ病の方が一般的で、夏季型うつ病は比較的新しい概念となります。しかし、タイやインドでは夏季性うつ病の方が一般的とも言われており、国や地域によって違うようです。

冬季性うつ病の症状は、倦怠感、気力の低下、過眠、過食が挙げられます。
一方、夏季性うつ病は、興奮過敏、食欲低下、不眠が症状として挙げられます。

男女の発症率は、女性が男性の3倍とも言われています。発症の要因は、日差しの強さ、夏の室内と室外の温度差による体の負担、食事の栄養の偏りなどが原因とも言われていますが、まだまだわかってないことも多いようです。治療法は、大きく分けて3つで、光療法、薬物療法、心理療法が挙げられます。

 

 

夏季性うつ病と夏バテの違いは?

夏季性うつ病と混同してしまいがちなのが夏バテです。
夏バテには明確な定義はありませんが、高温多湿な環境に対応するために体が無理をしたり、この時期の湿気や気温の急激な変化に体がついていくことが出来ず、自律神経の働きが鈍ることによって起こります。

これにより、だるい、疲れやすいや、食欲不振、寝つきの悪さ、胃腸の調子が悪くなるなどの夏特有の症状を総称して夏バテと言います。これらの症状は、前項でも触れた夏季性うつ病の症状とよく似ています。では、夏季性うつ病と夏バテの違いはどこにあるのでしょうか。

夏季性うつ病は交感神経が過覚醒の状態であることが特徴です。
例えば、同じ不眠でも、暑さで寝苦しいというような不眠ではなく、頭が覚醒していて眠れないという不眠が特徴として挙げられます。
さらに、感覚の鋭敏化も夏バテとの違いです。いつもよりも人混みがつらくなったり、他者評価が今まで以上に気になってしまうなど、今までストレスとして感じなかったことが気になるようになります。

その状態が続いてしまうと、過覚醒状態の脳は疲弊し、うつ状態になってしまいます。また夏バテは、体が疲れたり、しんどくなることはありますが、過度な不安や気分の落ち込みはないようです。気分が上がらないですとか、不安がとり切れないというような、いわゆる精神症状が持続しているかどうかがポイントになります。

 

 

夏季性うつ病を予防するために

では、夏季性うつ病をどのように予防したらいいのでしょうか。
これは、夏バテ対策にも共通していますので、参考にしてください。

まず取り組むべきことは、生活リズムを整えることです。私の過去の記事を読んでいただいている方には繰り返しになってしまいますが、日中に太陽光をしっかり浴びて、食事・運動・睡眠という一連の流れを作り、ルーティン化することが大切です。

①睡眠

まずは睡眠リズムを整えましょう。
夏の夜は暑く、寝苦しい日も多いですよね。エアコンをつけて寝る方も多いと思いますが、その使い方について考えていきます。
まず、エアコンはつけっぱなしでよいとされています。しかし、冷やしすぎても良くありません。特に内臓の冷えには気を付けましょう。内臓の活動にはある程度の熱が必要です。
しかし、エアコンや、冷たい飲食では内臓が冷えてしまい、内臓を温めなおすことに体はエネルギーを使ってしまいます。そのため体は疲弊してしまいます。これが夏バテの正体のようです。

就寝前から室温を28度前後に保った状態に保ちましょう。
もし、エアコンの風で調子を崩しやすいという方は、扇風機の風でもよいかと思います。夜寝苦しいということは、夜中の睡眠が妨げられ、睡眠の質が低下している可能性があります。布団やパジャマ・室温など、季節に合った寝室環境を作っていきましょう。

私が担当した患者さんにもエアコン嫌いで、夜は扇風機のみで対応している方がいました。当然のことながら中途覚醒もあり、日中のパフォーマンスにも影響が出ていました。

そこで、一緒にエアコンのメリット、デメリットを考え、メリットの方が大きいことを確認し、それからはエアコンをつけて寝るように切り替えました。今では安定した睡眠時間を確保できているようです。

②食事

食事のポイントは、夏特有の食べ物に注意することです。
それは、冷たいものを食べすぎないということです。エアコンの冷やしすぎでも触れましたが、私たちは体を動かす際にエネルギーが必要になります。その際に熱が発生するわけですが、冷たいものを食べて内臓が冷えてしまうと、内臓を温めるところから活動が始まります。すると、余計にエネルギーを使ってしまい、夏の倦怠感や疲労感につながっています。
ただし、水分を摂らない、冷たい食べ物を食べないということではなく、常温の水を飲んだり、冷たいものを食べた後に、コップ一杯の白湯を飲むというような工夫でも過度な冷えはなくなります。食事の一工夫で体への負担を減らしていきましょう。

③温度差のコントロール

急激な冷えや気温の上昇は体への負担が大きいです。
私の記事では、よく太陽光にあたることをお勧めしていますが、夏は快適な室温で、室内で過ごすことが大切です。もちろん太陽の光を浴びることも大切なので、カーテンを開けて陽の光を入れたり、少しベランダに出てみることもよいかと思います。

室内での過ごし方は、室温のコントロールが大切です。外出先が寒い場合もありますので、ストールやカーディガンなどを持ち歩き、羽織れるように準備しておくことも快適に過ごすポイントかもしれません。

 

 

まとめ

今回は夏季性うつ病について考えました。夏バテとの違いも触れましたが、まずはどちらも生活リズムを整えることが大切です。

また、夏季性うつ病と夏バテでは治療法も変わってくるため、もし気になる方はご自身で判断するのではなく、一度受診するのもよいと思います。