発達障害を抱える方に起こりがちな、アンコンシャスバイアスによるストレスについて(後編)
精神障害(疾患)から職場復帰後の上手なコミュニケーション方法
職場でのコミュニケーションでストレスを感じたら?アサーティブ・コミュニケーションを意識してみよう。
アンコンシャス・バイアスという言葉を聞いたことはありますか?
アンコンシャス・バイアスは、自分自身が気づいていない偏ったモノの見方や受け取り方、捉え方のゆがみのことをいいます。
アンコンシャス・バイアスは誰にでもあり、それがあることそのものが悪いわけではありません。しかし、自分の偏ったモノの見方の傾向に気づくことができずにいると、知らないうちに自分の発言について意味の捉え違いをされたり、相手を大切にするコミュニケーションができず、不用意な言葉で相手を傷つけてしまったりする場合があるのです。
特に発達障害がある方(中でもASD:自閉症スペクトラム)の特性は、アンコンシャス・バイアスの概念を取り入れることによって、困り感が出がちなコミュニケーション場面での対策を考える1つの方法となります。それでは詳しく見ていきましょう。
アンコンシャス・バイアスは、「無意識の偏見」と訳され、日本では2013年ごろからテレビや新聞などでも取り上げられるようになりました。世界的企業であるグーグルが、社員の多様性を生かす概念として「アンコンシャス・バイアス」と名付けた社員研修を行い有名になった言葉です。
日本でも、昨今では企業研修や学校教育に取り入れられるようになってきています。特に、多様性の文脈で導入されることが多く、1人1人がいきいきと活躍していくためにさまざまなモノの見方、考え方、価値観を知るという視点で広めていく活動がなされています。
たとえば、以下のような質問に対して、自分の考えで思い当たるものをチェックしてみてください。
(参考:連合アクション2020 気づこう、アンコンシャス・バイアス)
どうでしょうか。繰り返しですが、アンコンシャス・バイアスがあること自体が悪いことではありません。誰にでもありうる認知の偏りで、ただ、自分がどんな偏ったモノの見方をしてしまいがちなのか認識しておくことがとても大切なのです。自覚しておくことによって、他者とのコミュニケーションをスムーズに、よりよい関係をつくることができます。
また、アンコンシャス・バイアスの正体は、脳がストレスを感じた時にそれを回避するために自分に都合のよい解釈をするために現れてしまう、「無意識の自己防衛反応」です。自分の弱いところを感じたり、受け入れられない場面などで自分を守るために「●●なはずだから、自分は悪くない」「〇〇に決まっているから自分は正しい」というような心の動きが出てきます。
こういった場合に、アンコンシャス・バイアスは誰にでもある自然な反応だと知り、自分自身の思い込みに「気づく」ことが大切です。気づけば、その言動をすることで自分も相手も傷つけずにすみ、他の方法をとれるようになります。
発達障害の中でも、特にASD(自閉症スペクトラム)は一般的に、こだわりが強い、自分なりのルールがある、一部にとらわれてしまい、全体を見るのが難しいなどと言われます。
中でも、1つにものごとを0か100かの「白黒思考」で考えやすいという特性があり、それは同時並行に色々なことを進める「マルチタスク」が苦手だという背景があります。実際に手を動かすにしろ、何か頭の中で考えるにしろ、複数のことに注意を向け続けることが難しく、脳がストレスを回避するために1つのことに集中するように注意を絞ります。それが結果として極端に1つの考えに囚われる、ということになり、他者から見ると偏ったモノの見方として受け止められるのです。
また、他者とのコミュニケーションだけではなく、自分自身に対してもアンコンシャス・バイアスの影響があることも多いです。極端にネガティブに自分を見てしまったり、逆に自信過剰になる場合など、フラットに自分を見ることができていない状態のときは、そこにアンコンシャス・バイアスがある可能性があります。