職場でジョブコーチを上手に活用するには?

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ジョブコーチ
2021/10/7
2021/10/1

職場でジョブコーチを上手に活用するには?

障害者雇用で企業で働く際、大切なことの一つに職場の人との「コミュニケーション」があります。精神障害のある方の離職理由としても、上位に「職場の人間関係、雰囲気」があり、長く働き続けるためにも重要な要素です。

また、業務の面でも、障害の特性によっては、携わる業務の進め方などを工夫する必要があります。そのような工夫は初めから上手くやることは難しいですし、企業の担当者も、障害についての知識がなく、どう教えたらいいのか分からず戸惑うことも少なくありません。

このような職場での困りごとに対して、障害のある方がより職場で活躍できるようサポートしてくれるのが「職場適応援助者(ジョブコーチ)」です。

 

 

職場適応援助者(ジョブコーチ)とは?

ジョブコーチは、障害のある方の職場適応に何らかの課題がある場合に、職場にジョブコーチが出向いて、障害者と企業の両方に、障害特性を踏まえた必要なサポートを行います。

アメリカで「援助付き雇用」という制度として誕生し、日本では「障害者雇用促進法」のもとに「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業」が2002年から開始されたものです。

ジョブコーチは、障害のある方に対して職場の人とのコミュニケーションの方法や、効率の良い作業の進め方などのアドバイスをすることで、できるだけ早く職場に適応し、自分の力を発揮していくことをサポートします。

企業に対しては、本人が力を発揮しやすい業務内容の提案や、障害特性を踏まえた仕事の教え方、業務の進め方、コミュニケーションなどのアドバイスをします。

ジョブコーチは、障害者・企業両方のお互いに抱えている困難が見えにくい部分に介入し、橋渡しをすることで理解を促進していきます。いずれは企業が主体的に障害者雇用で働く従業員の雇用管理ができるように移行していくことが目的です。

 

 

ジョブコーチの種類

職場でジョブコーチを上手に活用するには?

ジョブコーチには3つの種類があります。

①配置型ジョブコーチ

各都道府県にある、地域障害者職業センターに配置されているジョブコーチです。

ハローワークの障害者窓口や就労支援機関などと連携し、就労が困難な障害者を対象として支援します。

②訪問型ジョブコーチや③企業在籍型ジョブコーチとも連携して支援を行う場合は、よりよい支援ができるようアドバイスを提供します。

②訪問型ジョブコーチ

障害者の就労支援を行う社会福祉法人などに雇用されるジョブコーチです。

独立法人高齢・障害者雇用支援機構や、厚生労働大臣が定める訪問型職場適応援助者養成研修を受けた人で、1 年以上の就労支援経験があるなどの経験を認められた人が担当します。

③企業在籍型ジョブコーチ

障害者を雇用する企業に雇用されるジョブコーチです。

②の訪問型ジョブコーチと同じく、研修を修了した人で、1 年以上の就労支援経験があるなどの経験を認められた人が、自社の障害者雇用の推進や定着のため企業内で活動します。

 

 

ジョブコーチ支援の内容

職場でジョブコーチを上手に活用するには?

ジョブコーチ支援は、障害のある人がが職場に適応して、自身の業務をスムーズに進められるように、具体的な目標を定め、支援計画に基づいて実施されるものです。

雇用開始時に利用されることが多く、職場適応援助者支援計画書を作成することによってサポートします。この計画書には、障害の状況や支援のポイント、必要な環境設定、企業内での支援体制確立に向けた取り組みについて記載されます。一定の期間内に目標とする状態を想定した上で実際の支援が行われます。

配置型ジョブコーチや訪問型ジョブコーチは、雇用開始時から数か月に渡って介入し、徐々に介入の頻度を減らして、サポートの役割を企業に渡していくナチュラルサポートの形成を目的とします。もし、雇用中に体調を崩すなど心配事があった場合には、その時点での利用も可能です。

企業型ジョブコーチは、ジョブコーチとして支援をしますが、その企業の社員でもあるため一時的な支援だけでなく、必要に応じて継続的なサポートも可能です。

実際のサポートの内容としては、

障害者に対して

・業務の進め方に関すること
特性に配慮した進め方や効率的な手順など

・職場内のコミュニケーションに関すること
適切に分からに事は質問したりSOSを出すこと

・体調管理に関すること
生活リズムや、休み時間や休みの日にはきちんと休むことなど

企業に対して

・障害特性に配慮した雇用管理に関すること
障害特性を理解し、個々に応じた業務の役割分担や業務量の調整など

・上司や同僚による支援(ナチュラルサポート)に
スムーズに移行していくことを目的とした連携
障害特性や課題を共有し、かかわり方や業務の進め方のポイントなどを伝えながらスムーズな意思疎通の促しをすること

などが行われます。

必要に応じて他の支援機関や障害のある方の家族とも連携をとっていく場合もあります。

 

 

ジョブコーチの支援を受けるには?

ジョブコーチを利用したいと思った場合に、利用しやすいのは地域の障害者職業センターや、ハローワークの障害者窓口からの申し込みです。障害者手帳がなくても利用できる場合があり、就職する企業で約1ヶ月以上の間、週20時間以上働く見込みがある人が対象となります。

また、就労移行支援・就労定着支援事業所などにジョブコーチが配置されている場合もあります。

就労移行支援事業所は利用するのに障害福祉サービス受給者証が必要になりますが、多くの就労移行支援事業所は、就職した後の定着支援も行っており、継続的なサポートを受けることができます。

企業型ジョブコーチは、特例子会社や障害のある方の雇用数が一定以上ある(数十人以上)企業で配置されていることが多いようです。

 

 

 

ジョブコーチは、企業で働くことに不安がある障害のある方にとっても、障害者雇用を進める企業にとっても、心強い存在です。

お互いの不安や障害特性などの見えにくさを捉えながら、双方と必要なコミュニケーションをとることで働きやすい環境も整えていくことができます。

厚生労働省の平成30年度障害者雇用実態調査によると、企業が障害者雇用を促進するために必要な施策として「外部の支援機関の助言・援助などの支援」が最も多くなっています。

障害のある方ご本人も、企業も、ジョブコーチを利用することができる場合は積極的に活用・相談してみてください。