睡眠障害と不眠症の改善方法とは?

リハビリ中の方
不眠症
睡眠障害
2021/8/27
2021/8/16

今回は睡眠障害と不眠症をテーマにお話しします。睡眠を改善するための対策を紹介していますので、自分が出来るところから取り組んでみてください。

 

 

睡眠不足と不眠症の違い

はじめに、睡眠不足と不眠症の違いを考えていきましょう。どちらにも医学的な定義がありますのでご紹介いたします。
睡眠不足の医学的定義は、

  1. 眠る能力は十分に備えているがそれでも睡眠が足りないこと
  2. 自分に十分な睡眠の機会を与えないことです。

つまり、睡眠不足とは、眠ることはできるが、あえて十分な睡眠をとらないことだと定義されます。

一方、不眠症の医学的定義は、

  1. 睡眠を発生させる能力が不十分であること
  2. 自分に睡眠の機会を十分に与えているにもかかわらず眠れないことです。

つまり不眠症の人は、十分な睡眠時間をとっても、質量ともに不十分な睡眠しか得られないことだと定義づけています。
厚生労働省では、「長期間にわたり夜間の不眠が続き」、「日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、この二つが認められた際に不眠症と診断されるとしています。
不眠症とひとくくりにしてしまうのではなく、眠る環境を整えたり、眠る機会をきちんと作ったり、生活リズムを見直すことで睡眠が改善されることもあるということを知っていただけるとよいかと思います。

 

 

その睡眠薬は必要ですか?

睡眠に関する悩みの解決策として薬物療法が挙げられるかと思います。TVのコマーシャルでもよく見られますので、睡眠薬は医師の処方薬だけでなく、ドラッグストアなどで比較的容易に手に入ると思われます。

この睡眠薬について少し触れていきたいと思います。

ある睡眠薬に関する研究です。65件の睡眠薬とプラシーボ(偽薬)を使った研究データを集め分析しました。全体的に、本物の薬を飲んだ人は、プラシーボを飲んだ人に比べて寝つきが早く、夜中に目が覚めることも少なかったと報告していました。しかし、実際には、本物の薬とプラシーボでは眠りの深さ・早さに違いはなかったとし、睡眠薬は入眠までの時間をわずかに向上させるだけであると結論付けています。

そして最新の睡眠薬でさえ、プラシーボを飲んだ被験者と比較して入眠が“6分”早くなっただけでした。
これを聞いて皆さんはどう思いますか?薬代や服薬するという手間もあると思います。副作用も考慮しなければなりません。そうした中で、6分早く眠るために薬を飲むのか、もう少し別の方法を検討するのかは考えた方がいいのかなと思います。

私は睡眠薬を飲むことを否定しているわけではありません。私自身、患者さんに接する中で、どうしても休養が取れない方がいます。そのような時には処方されている睡眠薬を服用することを促します。

しかし、最初に考えていただきたいことは、生活を見直すことです。薬で自分を眠らせるのではなく、生活リズムや睡眠時の環境で修正を図ることです。
その上で薬を飲んだ方がより効果的であると思います。極端な例かもしれませんが、患者さんの中には、昼寝はしっかり取り、夜は眠れないから大量の睡眠薬を服用している方います。これだと昼夜は逆転するか、薬が手放せなくなるかです。第一選択を薬に限定するのではく、生活リズムや活動性、感情の揺れ動きを見直した方が薬の効果を十分に引き出せると思います。

 

 

睡眠リズムを整えるには?

①睡眠時間の固定化

就寝時間と起床時間の固定化を図っていただきたいです。
具体的に説明しますと、7時間から8時間睡眠時間を確保していただきたいので、それを考えると、朝の6時に起床するのであれば、23時には床に就くつもりで生活を見直してみるというようなところです。

はじめはこの固定化はなかなか大変な作業かと思います。何年も不規則な生活を送ってきた中で、急に時間を固定化することは難しいかもしれません。しかし、前述したように睡眠不足のデメリットが相当大きいです。ですので、やはり眠るための行動はきちんと見直した方がいいのかなと思います。

②睡眠環境の改善

まずは光についてです。眠くなる時間をコントロールしているメラトニンというホルモンがあります。
このメラトニンを作っているのがセロトニンというホルモンになりますが、これは日中太陽光を浴びることで分泌されるといわれています。つまり、日中に太陽光を浴びることで夜眠くなることができるのです。時間としては、10分から15分だけでもいいという研究結果もありますので、それほど長い時間は必要ないようです。また、曇りでも太陽光の効果はあるようなので、まず朝起きたら、窓のカーテンを開けて太陽光を浴びましょう。それだけでも、睡眠のアプローチの一つになります。

次に寝具です。マットレスや枕をこだわる方は多いと思います。
しかし、睡眠の質が向上すると研究で明らかになっているのは「重い掛け布団」のみであるようです。スウェーデンの睡眠研究所で行った実験では、1週間今まで通りの寝具で寝てもらい、その後2週間重い掛け布団を使用しました。その後、再び今まで通りの寝具を1週間使い、寝具の違いが、睡眠にどんな影響を及ぼすのかを検証しました。

結果は、重い掛け布団を使用していた2週間のほうが、『落ち着いて眠れたと感じた』と答えた人が多かったそうです。さらに、客観的にも入眠の改善、中途覚醒の減少による睡眠時間が伸びたという結果が報告されています。実際に家具を販売しているニトリでの最近の売れ筋は少し重い掛け布団となっているようです。ですので、軽すぎる布団よりも少し重い布団に変えるだけで、寝つきがよくなる方がいるかもしれません。

③マインドフルネス

これは特に悪夢を見たり、中途覚醒がある方にお勧めしています。
悪夢を見る方は、脳の整理が追いついていないという予測が一つ立てられます。そういった方は、起きてる時から脳の整理をすることが必要であり、その方法としてマインドフルネスをお勧めしています。マインドフルネスのやり方は、様々な本や動画で紹介されていますので特にここでは触れませんが、自分が落ち着くやり方を探していくことが大事かと思います。

私が担当している患者さんの中には、焚き火の動画を見たり、電車のモーター音を聞くと落ち着くという方がいらっしゃいました。ぜひ自分の形を見つけてもらうといいのかなと思います。

④食事

食事と飲み物についてです。特に夕食内容を見直してみることがいいかもしれません。
香辛料などの刺激物を控えてみることや、消化に時間がかかるものを避けることもよいと思います。今更ですが、お酒の睡眠への効果は逆効果です。一見寝入りはいいですが、眠りは浅いですし、脱水状態になりやすいので、眠りの質は下がります。お酒で寝るという選択肢はおすすめしません。

 

 

まとめ

今回睡眠についてお話しましたが、睡眠リズムを整えるために後編でご紹介した方法は、“環境調整と睡眠の固定化を図ること”です。

環境は皆さんそれぞれの寝室の事情もあると思いますので、可能な範囲で試していただきたいと思います。

そして、まずは自分が眠りやすい方法を探ることが大切です。睡眠は私たちが死ぬまでやらなければいけないことのひとつだと思います。ですので、しっかり眠れるということは、私たちが生きやすくするひとつの術になると思っております。

それでは良い眠りを 。