睡眠がメンタルヘルスに及ぼす影響とは?

リハビリ中の方
メンタルヘルス
睡眠
2021/4/26
2021/6/7

今回は睡眠とメンタルヘルスについてお話していきます。
睡眠と脳に関する研究をもとに、なぜ睡眠が必要かを考えていきたいと思います。

 

なぜ睡眠が必要なのでしょうか?

はじめになぜ睡眠が必要なのかについて考えたいと思います。眠っている間は、無防備なうえ、仕事もできませんし、ご飯も食べられないし、好きなこともできません。

しかし、私たち人類は誕生してから現在まで進化し続けているわけですが、睡眠は一向に退化していません。このことから私たちが生きてくうえで“睡眠は時間を奪う”というデメリットを補ってしまうほどメリットがあると捉えることができると思います。

他の分野同様に、現在までメンタルヘルスに関する様々な研究が行われています。最近では、メンタルヘルスと脳の関係について言及した研究も増えてきているのですが、脳を休めたり、機能をリセットしたりする効果は現状で“睡眠以外に見つかっていないこと”が睡眠の必要性の最大の理由になります。

 

そもそも眠らないと私たちはどうなるのか

睡眠がメンタルヘルスに及ぼす影響とは?

理想的な睡眠時間は、おおよそ7時間から8時間といわれています。
では、いくつかの研究をもとに、十分な睡眠がとれていないと、どのようなことが引き起こされるのかを考えていきたいと思います。

Saxena AD, George CFP(2005)は研修医を、夜中に何度か起こされる群と、自宅できちんと眠れた群に分け、翌日のテストで反応時間を比較した研究を行いました。途中で起こされている研修医は、対照と比較して、反応時間が遅くなる瞬間があることが明らかになりました。
この反応が遅くなる時間の原因がマイクロスリープではないかと言われています。マイクロスリープとは、本人も気づかないほんの数秒の間に眠ってしまい、注意が途切れる現象です。この間、脳はすべての知覚情報がシャットアウトされます。マイクロスリープは慢性的な睡眠不足が原因と言われており、日常的に睡眠時間が7時間に満たない人は、この現象が発生している可能性があります。一瞬だけ眠ってしまうことで、反応が鈍くなったり、いわゆるケアレスミスや不注意を引き起こしてしまうのです。

また、Williamson,Feyer(2000)は、6時間以下の睡眠では、被験者の反応速度が最大で50%減少し、ほろ酔い期と言われる血中アルコール濃度0.05%の状態よりもパフォーマンスが落ちることを明らかにしました。徹夜をしたり、24時間睡眠を取らない状況では、パフォーマンスは血中アルコール濃度0.10%と同じ状態になります。さらに、睡眠不足の方は、自身のパフォーマンス低下を実際よりも過小評価する傾向にあることが分かっています。
自身の能力が低下していることを正しく評価できなくなることにより、自身の睡眠不足に気づかないということが引き起こされるようです。つまり、“寝ていなくても自分は大丈夫”という状態と言えます。私たちは飲酒をすると判断が鈍くなることを当たり前のように理解していますが、睡眠不足はこの飲酒状態以下のパフォーマンスになっているにもかかわらず、それに気づけないということが研究で示されているのです。

さらに、Randy Gardner(1964)が264時間の断眠に挑戦しました。このときは、断眠2日目で目の焦点が定まらなくなり、4日目で幻覚が見えて記憶が欠落、7日目にはろれつがまわらなくなりました。さらに、8日目には発音が不明瞭になって、9日目になると文章が最後まで話せなくなったといいます。また、指や眼球が震えるようになったそうです。
睡眠は脳の機能を休めたり、リセットする役割があるとお話ししましたが、断眠によって脳が働き続けている状況を作ると、脳の機能が正常に機能しなくなってしまうということが極端な例ではありますが、この実験からもわかると思います。

また、睡眠は感情や理性にも影響を及ぼします。私たちの感情は、アクセル(扁桃体)とブレーキ(前頭葉)が連動することで適切な判断をしています。しかし、睡眠不足になると、扁桃体と前頭葉のつながりがなくなり、アクセルが全開に、ブレーキは効きにくい状態になります。それにより、感情が暴走してしまうことがわかっています。また、良心の呵責を感じにくくなり、大雑把になり、ぼんやりとし、衝動を抑えられなくなるといわれています。Matthew Walkerは著書「睡眠こそ最強の解決策である」で、扁桃体と睡眠に関する研究について紹介しています。徹夜をする群と、睡眠を十分にとる群に分け、その後100枚の写真を見せた状態でMRI画像を観察しました。すると、睡眠不足の人の脳は、対照と比較して扁桃体の働きが60%増幅していることを明らかになりました。この研究からも睡眠不足の状態になると、感情のアクセルがより強く働きやすいことがわかります。

睡眠と脳の機能についてここまで触れましたが、体ともつながりがあります。まず太りやすいということがあるようです。眠らないと食欲を増すホルモンが出て食欲を抑制するホルモンが出にくくなるという研究結果も出ています。また、心疾患をはじめとする命にかかわる様々な病気を引き起こすリスクを高めるといわれています。

 

睡眠のとりすぎも問題?

疫学的なデータを参考にすると、睡眠と寿命の関係は比例していないようです。平均睡眠時間が9時間を超すと、死亡リスクも高まっているようです。
しかし、このデータには、重度の病気にかかっているため、長時間の睡眠を余儀なくされている方が含まれており、現状睡眠が体に悪いという証拠は見つかっておりません。しかし、食べ物、水、酸素も多ければいいという仕組みにはなっておらず、睡眠も適切なバランスが求められているということは言えると思います。適切な睡眠時間は7~8時間と言われています。
それ以上寝てしまうという要因としては、睡眠の質が関係していると考えられます。睡眠の質が低いと、その足りない分を量で補おうとします。この解決策としては、睡眠リズムが整っていること、睡眠時の環境が重要だと思います。光、寝具、温度など睡眠の質を高めるための環境づくりが大切になるかと思います。

 

ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)

睡眠がメンタルヘルスに及ぼす影響とは?

前項までに睡眠不足と睡眠過多の影響について説明しましたが、平日睡眠不足で、休日睡眠過多の状態を繰り返している方も多いのではないかと思います。
このような、平日と休日の就寝・起床のずれをソーシャルジェットラグと呼びます。休日の朝寝坊で体内時計は30~45分遅れてしまうことが明らかになっており、このずれを戻すのには数日要してしまいます。対策などの詳細は記事「【ブルーマンデー症候群】つらい月曜を乗り切るためにすべきこととは?」で言及しておりますので良ければそちらもご参照ください。

 

まとめ

今回はなぜ睡眠が必要なのかについて考えました。“眠る”ということに関してのデメリットはほとんどないと言っても過言ではないと思います。

むしろメリットがとても大きく、きちんと眠ることによって心身ともに健康を保つことができることを知っていただけたと思います。後編では、実際に十分な睡眠をとるための対策をご紹介していますので、良ければそちらもご参照ください。