精神障害でお悩みの方が仕事が続かないケースとは?

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精神障害
2021/10/22
2021/10/18

精神障害でお悩みの方が仕事が続かないケースとは?

障害者雇用の中でも、年々民間企業での雇用数の伸び率が高くなっている精神障害者ですが、せっかく採用されたものの、その後の職場定着率は低い傾向にあります。

厚生労働省の統計結果からみると、障害者雇用求人での採用であっても、入社半年後の定着率は64.2%と他の障害種別よりも低くなっています。障害を開示しての一般求人での採用や、障害非開示での採用であると定着率はより下がります。

精神障害でお悩みの方が仕事が続かないケースとは?

離職の理由として多く上げられているのは、

  • 疲れやすく、体力・意欲が続かない 統合失調症
  • 症状が悪化した
  • 作業・能率面で適応できなかった
  • 仕事内容が合わない うつ
  • 賃金・労働条件の問題
  • 職場の人間関係

というものです。
(参考:平成25年度 障害者雇用実態調査 厚生労働省 )

それぞれ具体的にどのようなケースがあるのか事例をご紹介します。

 

ケース1

精神障害でお悩みの方が仕事が続かないケースとは?

Aさんは、大学時代に地元から離れ、慣れない土地で生活し始めたことをきっかけに統合失調症になり、入退院を繰り返していました。

休学制度を利用し、大学は卒業できたものの、その後新卒で就職活動がうまくいかず、アルバイトをしながら就職活動を続け、障害を非開示にすることで、なんとか1社から内定をもらいました。

素直で真面目な性格だったAさんは、仕事も真摯に取り組み、職場も少人数でアットホームな雰囲気だったことからスムーズになじむことができました。

一方で、少人数で仕事に取り組むことから1人あたりの任される仕事の範囲が広く、徐々に負担になるようになっていきました。

しかし、障害を非開示にしていたことから誰にも相談できず、責任感から頓服の薬を飲んでストレスに対処しながら仕事を続けていましたが、「嫌われているからこんなに仕事を任されるんだろうか」という被害妄想が出てくるようになりました。

身体も疲れやすく、徐々に出勤する意欲が低下して欠勤するようになり、主治医から統合失調症の再発と診断され、退職することになりました。

その後、療養期間を経て、就労移行支援を利用することにしました。1年間の就労移行支援の利用で、障害も開示して次の就職先を選ぶことにしました。今は合理的配慮を受けながら無理のない範囲で得意な作業を担当することになり、体調のリズムを大切にしながら働くことができています。

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障害を非開示にしたことで周囲に相談することや合理的配慮を受けることができず、体調が悪化してしまったパターンです。

精神障害のある方が無理なく働き続けるためには、必要な合理的配慮を受けながら同僚と安心なコミュニケーションをとれる環境で働くことが大切です。

 

ケース2

精神障害でお悩みの方が仕事が続かないケースとは?

Bさんは、大学を卒業後、有名な企業へ就職し、非常に忙しい仕事でしたが責任かを持って懸命に担当業務にあたっていました。残業が月80時間を超えることもあり、だんだんとミスが増え、眠れなくなったことで医療機関を受診し、うつ病と診断されました。

かなり無理をして働いたことで、休職期間も長くなり、病院のリワークを活用しながらスモールステップで体調を整えていきました。また忙しい職場で働くことには心が折れてしまい、自分のペースを大切に働きたいと思い障害者雇用を希望、また有名企業で障害者枠で採用されました。

ところが、入社してみると仕事は簡単なルーティーンワークばかりで、何のために働いているのか分からなくなってしまいました。自分のペースを大切にして働きたいと思っていましたが、障害者雇用の給与水準は低く、実際に働き始めてみると体調もかなり整っていたことから、障害を開示する形で一般求人への転職をしました。

小さな会社ですが、テレワーク可の求人だったので、通勤時間が必要なく、体調にも無理なく働くことができました。現在も、通っていたリワークの卒業生の座談会に顔を出し、仲間と情報交換をすることで心身のバランスをとりながら働くことができています。

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就職した企業とBさんの能力がマッチしていなかったケースです。

企業の障害者雇用の在り方は、それぞれの企業で全く異なる現状があります。精神障害のある方の採用は雇用義務化されたのが平成30年と直近のことです。

まだ企業が精神障害のある方の採用に慣れておらず、業務内容と本人のスキルや希望とマッチングしないことも多々あります。採用面接時点で、お互いの希望やできることをすり合わせることが大切です。

 

ケース3

精神障害でお悩みの方が仕事が続かないケースとは?

Cさんは、大学を卒業後一般企業で勤務していましたが、担当した業務でケアレスミスが多い、大切な予定をすっぽかしてしまう、同時にいくつかの仕事を進めることができないなど困りごとが多く発生していました。

確かに昔から忘れっぽいところはあったものの、学生時代は深刻に悩むことはなく、仕事を始めてから困りごとが急に増えて、Cさん自身も戸惑っていました。

むしろ学生時代はムードメーカーで周囲から注目される存在でもあったので、仕事のミスをすることで周囲の人に迷惑をかけてしまうこと、それによって怒られることが増えたことに対して大きなショックを受け、自分で何とかしようと試行錯誤しましたがうまくいかず、だんだん体調が悪くなり、眠れなくなりました。

ミスが多いことで同僚ともコミュニケーションが取りづらくなり、業務で同僚と助け合うことが難しい状態になりました。

上司のすすめで医療機関を受診したところ、適応障害とうつ状態の診断。主治医の指示で休職となりましたが、そのまま復職できず退職となりました。

その後主治医のすすめで就労移行支援を利用し、自身の障害についての理解や、どんな仕事が自分に合うかを考える機会を持ちました。また、通院する中でテストをしてみると、適応障害は2次障害で、もともと発達障害の傾向があることが分かりました。

忘れ物が多い、ケアレスミスをしてしまうなどの特性について、スマートフォンのアラーム機能を用いて防止するなどの対処方法を身に付け、発達障害に理解のある企業へ就職することができました。必要な合理的配慮についても説明をし、同僚ともお互いにサポートし合いながら仕事をすることができています。

障害からくる困りごとに対してうまく対処できず、人間関係が悪くなってしまい退職したケースです。適応障害・うつ状態と診断されますが、よく調べるとのちに発達障害の傾向があることも分かりました。

このように、発達障害の影響で二次的にうつ状態・うつ病が出てきて、先にうつの治療を開始することはよくあります。自身の障害特性を理解し、周囲に説明できることが円滑なコミュニケーションには不可欠です。

 

まとめ

精神障害のある方が仕事が続けないケースを2つご紹介しました。3つのケースに共通することは、うまくいかない経験をしたことで、次にどうしたらいいのか大切なポイントと向き合っていったということです。

障害特性を自分でコントロールし、難しい部分は合理的配慮を求めることが大切です。また、企業とのマッチングは、採用側の企業と採用面接や入社後のコミュニケーションでお互いがすり合わせる必要があります。

これらのことは、あまり深く考えないで進んだ場合「少し不安だけど、なんとかなるかな」「そこまで向き合うのはつらいから…」とスルーして進みがちな部分です。

仕事を続けていくためには、一度しっかり向き合って自分なりの「働きやすい」をイメージし、職場とすり合わせていくことが大切です。