コロナ禍で障害者雇用はどのような影響が出ているのか?

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コロナ
障害者雇用
2021/8/30
2021/9/8

コロナ禍において、障害者雇用の求人数の減少や解雇数についてインターネットやテレビのニュースでで取り上げられることがあります。

非常にネガティブなニュースが多いですが、コロナ禍で一般労働者を取り巻く状況も悪化しており、一般労働者に比べると障害者の就職件数や就職率の減少幅は小さいものになっていて、障害者雇用を取り巻く環境がより顕著に悪化しているというわけではありません。
ここでは、厚生労働省が示している実際のデータを参照しながら、コロナ禍における障害者雇用での就職や、既に働いている障害者雇用枠での業務状況について見ていきましょう。

 

 

コロナ禍で障害者雇用にはどのような影響が?

厚生労働省の令和2年 障害者雇用状況の集計結果によると、民間企業の雇用障害者数は過去最高を更新した一方、令和2年度のハローワークを通じた障害者の職業紹介状況によると、就職件数は 89,840 件で、対前年度比12.9%減となり、平成 20 年度以来、12 年ぶりに減少しました。

これはハローワークを利用した雇用を多く行っている100~300人未満企業、300~500人未満企業では実雇用率が低下しており、500~1,000人未満企業、1,000人以上規模企業では実雇用率が上昇していることの影響があります。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、「製造業」、「宿泊業,飲食サービス業」、「卸売業,小売業」といった障害者が比較的応募しやすい業種の求人数が減少するとともに、求職者の就職活動を控えた人が多かったと考えられます。

また、就労移行支援事業所などの訓練機関において、特に緊急事態宣言下で企業での実習受け入れが難しく、その分就職に結びつくスピードが遅くなる事例などが見受けられました。

実際に障害者雇用で既に働いている人たちに対しては、企業にリモートワークが求められた影響で急に在宅やサテライトオフィスでのリモートワークを求められる、出勤が必要な場合も環境変化や業務の変更が生じるなどの影響がありました。

 

 

法定雇用率には変化はあったか?

法定雇用率は2021年3月に2.2%から2.3%に引き上げられました。法定雇用率は、リーマンショックで不況となった時も予定通り引き上げられており、障害者の雇用の確保について、景気状況によらず進められている現状があります。

企業へのアンケート結果でも、「社会情勢を見極めながら計画を見直すことも視野に入れている」と回答した企業がある一方、「コロナ禍でも積極的に障害者向けの仕事の開発や、採用を進める」「雇用率の達成が出来ておらず、法令遵守のためにも計画通り遂行予定である」という回答があり、障害者雇用への関心は高くなっています。

実際に、令和2年の民間企業の実雇用率は2.15%で、前年と比較しても0.04ポイント上昇しています。

 

 

リモートワーク下では今までとは異なるサポートが必要

コロナ禍において、特に都市部やIT関係などの企業では一気にリモートワークが進み、障害者雇用で働く人にも大きな影響がありました。

他の社員と同じく一律にリモートワークになった場合は、主に自宅で業務を行うことが増えています。

リモートワークでは、勤務先の上司や同僚とメールやチャットでコミュニケーションを行うこととなり、気楽に質問などができない状況となりがちです。

対面でのコミュニケーションは違い、文章でのコミュニケーションは、「伝えたいニュアンスが伝わっただろうか」「いつ返事が来るだろうか」という心配が生まれやすくなります。業務中や休憩中などに気楽に雑談がしにくい分、不安をケアできる心理的なサポートが必要になります。

オンライン会議をも増え、視覚障害のある方は画面共有で示される資料が見えにくい、聴覚障害のある方はパソコンを通じて人の声が聞き取りにくいなど、障害特性によって必要な配慮が異なります。

紙を扱うなど、リモートワークができない業務の場合は、感染への懸念がある中出勤せざるを得ず不安な気持ちをかかえがち、ということもあるようです。その場合、上司はリモートワークができる場合であっても、日を合わせて一緒に出勤しすり合わせを行うなどのサポートが望まれます。

特に、入社してすぐにリモートワークになる場合は、他社員との関係構築や業務をキャッチアップしていく必要性があるなど一定のハードルがあるようです。障害者雇用の場合は、道理的配慮をどのようにしていくかのすり合わせで、通常よりも細やかなコミュニケーションが大切です。

コロナ禍での状況にもよりますが、出勤とうまく組み合わせたりリモートでも他社員とコミュニケーションをとれる機会をつくるなどのサポートが必要になります。

 

 

リモートがメリットになることも

一方、リモートワークはメリットもあります。リモートワークは、自宅で業務を行うことが多く、通勤の負担がなくなります。時間的な余裕ができ、慣れた場所で仕事をすることができるため、体調にも余裕ができます。

もし体調がすぐれない日があっても、昼休みに横になるなど休憩もしやすいです。

出勤していると多くの他の社員に囲まれ、緊張感のある中で仕事をしなければなりませんが、自宅であれば肩の力を抜いて余計なプレッシャーを感じずに仕事に集中できることも多いです。

このようなメリットは、障害の有無に限らず、リモートワークを経験した多くの人が感じているのではないでしょうか。

コロナ禍において多様な働き方が進展した1つの例ともいえるでしょう。

 

 

まとめ

新型コロナウイルスの障害者雇用への影響は、企業の経営状況に左右され悪化しているところもあれば、社会的な機運として、さらに障害者雇用を推進していく動きもあり、今後も障害者雇用への注目は続いていくでしょう。

もし今コロナ禍において障害者雇用で影響を受ける働き方をしなければならない状況であっても、時間はかかるかもしれませんが、今後また景気回復とともに状況は変化していくでしょう。

障害者雇用においても、リモートワークなど新しい働き方は進んでいきます。

改めて、自分の業務で得意なことを伸ばしたり、自分に合う働き方のスタイルの認識を深めることが、状況が変化していく社会で自分らしく働き続けることのできるための助けになるかもしれません。

コロナ禍における困難は、誰にとっても初めてのことです。もし大変な対応をしなければならない状況になっていたら、1人で考えず、相談機関などを積極的に頼ってみてください。