精神障害を抱えていることを職場に話すべきか?

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2021/9/13
2021/9/13

精神障害を抱えていることを職場に話すべきか?

今回は精神障害を抱えていることを職場に話すべきかというテーマで考えていきたいと思います。
予め病気のことを職場に伝えて働くことを“オープン”、病気のことを伝えずに働くことを“クローズド”と表現することもあります。この記事ではオープン、クローズドのタイミングやメリット・デメリットを考えていきましょう。

 

 

障害をオープンにすべきか

まず結論から言わせていただきますと、“言わなくてもよい”と私は考えています。
現在の我が国の社会状況において、職場で自分の病気のことをオープンにするメリットはあまりないと思います。

確認しておきたいのは、この記事で取り上げている病気を告知する方というのは、“精神障害手帳を取得しているが、障害者雇用ではなく、一般就労している方”を指します。
障害者雇用であれば、合理的な配慮の観点から病気について説明を行う必要がありますが、一般就労であれば、基本的に職場に言わなくてもいいと思っています。
しかし、受診などの治療のために定期的に有休を使わなければならないという方は事前に告知をした方が休みを取りやすくなるということもあると思います。
さらに、産業保健系のスタッフが会社にいる場合は、相談をしておくこともよいと思います。

なぜ一般就労の場合に告知しない方がよいのでしょうか。
まずは、精神疾患をセンシティブ情報と捉えるところから始めていきましょう。
センシティブ情報とは『本人の信条や社会的身分、病歴など、漏洩した場合に犯罪に悪用される、もしくは重大な不利益を本人に及ぼす可能性のある情報です。機微情報とも呼ばれています。』皆さんの職場を思い浮かべてください。

自分が働いている職場の人で、どのくらいの人が高血圧、糖尿病を患っていることを知っていますか?生活習慣病と言われているからには、私たちの周りには患っている人がたくさんいるはずです。ですが私を含めて、同じ職場の人の持病について知っていることは少ないと思います。案外、同僚のプライバシーは知らないものです。
私自身も内科や整形外科にかかるために有休を使うことになっても、よっぽどの事情が無い限り、職場に受診内容は伝えません。このように考えると、精神科の病気についても同様に他者に説明をする必要性がないことがわかります。

さらに告知しない方がよいとする理由に、偏見の問題もあります。
最近では減ったと言われていますが、古い体質の職場だったりすると、昔の精神疾患のイメージが強く残っている場合があります。
例えば、少し頭痛があって休んでしまった場合に、“あの人は大丈夫なのか”、“休職させた方がいいのではないか”、“やめさせたほうがいいのではないか”と言われてしまう可能性あります。職場における精神疾患の捉え方は気をつけた方がいいと思います。

 

 

告知をするメリット

次に告知をした際に期待できるメリットについて触れたいと思います。
一つ目は、休みやすくなるかもしれないということです。告知をしていない状態で休みを取るには、受診について隠した状態で有休を取得する必要があります。例えば、告知ができていれば、メンタル不調による休みを風邪という嘘をついたり、取り繕ったりしなくともよくなる可能性があります。

二つ目は、勤務形態を変更できる可能性があります。業務量を減らす軽減勤務や就業時間を短縮する時短勤務を行うことも可能になるかもしれません。しかし、その際は、給料に影響を与えるかもしれませんので、注意が必要となります。

 

 

告知をするデメリット

精神障害を抱えていることを職場に話すべきか?

もちろん理想的には病状のことを伝え、配慮をしてもらうことが望ましいと思います。
私も復職・就労支援をしている中で、患者さんの病気のことはしっかり告知をしたほうがいいという立場を取っています。しかし、実際のところうまくいっているとは言い難いです。

リワークの患者さんのほとんどは、障害者雇用ではなく、一般就労です。私が担当している患者さんが復職する時は、病気のことをある程度知った人が多い環境で戻ることになります。それでも偏見があるということは、患者さんから何度となく聞かされています。

仕事を振られないことは良くある話で、服薬をしているだけで仕事をできる状態ではないとみられてしまう場合もあります。
服薬が当たり前の慢性疾患がたくさん存在するにも関わらず、このような状態なのです。
中には、責任のある業務をやらせてくれないということも、残念ながら事実としてあります。もちろん精神疾患を抱えながらきちんと病状を管理し、再休職も防いで昇進する方もいます。正式な休職手続きを踏んでいたとしてもこのように様々な状況があります。

安定して仕事を継続するのは、告知をするだけでなく、業務量に応じて自分自身が病状の管理ができること、時には出来ないことを出来ないと伝えることも大切です。

 

 

告知する際の注意点

次に告知の際に気を付けるべき点について考えたいと思います。
まずは告知をする環境です。昨今ですと、リモートや SNS といったツールが普及しています。自分が話したことは世界中の方の前で話していると考えてもいいと思います。誰に、どのタイミングで、どういった状況で話すのかは事前に考え、準備することが大切です。
続いて告知をするタイミングです。
前述しました受診のために有休をとらなければならないこともあるかと思います。
そういった通常の業務に支障が出るお休みをとる際は、場合によっては説明責任が生じるかと思います。精神疾患も同様に受診や薬を受け取るタイミングが平日になってしまうこともあるかと思います。精神疾患だから伝えた方がよい・伝えなくてよいということではなく、業務に支障があるかどうか、それに伴う合理的配慮を押さえられるとよいと思います。

近頃、よくテレビや動画サイト、SNS で病名を告白している方がいます。
自分の病気を告白するということが風潮としてあるかもしれません。しかし、テレビや動画で告白をする方は、ある意味で自分の地位を確立しているため、告白をしても大丈夫な立場におり、メリット・デメリットを計算して話している方もいると思います。

自分の好きな芸能人・有名人が自分と同じ病気で、告白をしているから、自分も告白してみようという考え方は少し極端であると思います。病気について告白をするのであれば、主治医や支援者にきちんと相談することをお勧めします。誰に、いつ、どんな事を相談するのか事前に作戦を練ってから告知を行うことがよいかと思います。

 

 

面接時に伝えるべきか?

精神障害を抱えていることを職場に話すべきか?

就職や転職時の面接ではどうでしょうか?こちらも必ずしも伝える必要はないのですが、業務に支障がある場合は伝えた方がいいようです。薬の副作用で、運転を止められていたり、私たちのような医療従事者で患者さんの体を触る仕事だったりする場合は、職場に確認する必要があると思います。業務に支障があるのか、ないのかという判断がつかないというときは、転職エージェントや社会保険労務士に相談することも検討してみてください。

 

 

まとめ

職場に病気について告知をするメリット・デメリットを考えました。
現実的にはすべて告知をしたからといって、必ずしも現状が良くなるということはないと改めて強調しておきたいと思います。一方で、稀な例ですが自分の病気のことを包み隠さず話したが、特に問題がなかったという場合もあります。告知する・しないにかかわらず、自分の状況を話せる関係作りができているのかもきちんと確認しましょう。

最後になりますが、大切なことは、障害の有無や種類に関わらず、皆さんが働きやすくなることが一番だと思います。私たちは病気だけでなく、家族の事情など様々な問題を抱えながら、それらと上手くバランスを取りながら働いています。そのために、もっと気軽に自分の持病や事情を話せるような職場の環境作り、相談できるコミュニケーションが大切となります。