自閉症スペクトラム(ASD)から仕事復帰するには?

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自閉症スペクトラム
2021/2/16
2021/9/14

はじめに

大人になってから自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されたら、もう普通の仕事に就くことはできないのでしょうか?いえ、そんなことはありません。

自閉症スペクトラム障害は発達障害の一種ではあるものの、日常生活を送ることは十分可能ですし、一般的な職場で仕事をすることも可能です。しかも、仕事の種類によっては自閉症スペクトラム障害を持っている人のほうが高い能力を発揮することもあるので、仕事復帰の際にはできるだけ適性がある仕事を選ぶのが良いのではないでしょうか。

今回は大人の自閉症スペクトラム障害についての概要と仕事をするうえで感じがちな悩みについて知っていただき、さらに仕事復帰を念頭においてどんな仕事が向いているのかについても解説します。

 

自閉症スペクトラム(ASD)とは

自閉症スペクトラム障害は時折、ASDとも呼ばれています。これは「Autism Spectrum Disorder」を略したもので、名称のとおり自閉症の一種として取り扱われています。自閉症というとアスペルガー症候群を連想する方は多いと思いますが、発達障害のうち言語発達に遅れがない場合をアスペルガー症候群と呼び、言語発達に遅れが見られる場合を自閉症と分類されることが多いようです。
自閉症スペクトラム障害には、主に3つの障害的特性があります。1つめは「社会性」で、2つめは「コミュニケーション」、そして3つめは「想像力」です。それぞれについて個別に概要を解説しましょう。

社会性の障害について

他人との関係を構築するのが苦手な特性を、社会性の障害といいます。人と話す時には目を合わせて意思疎通をするものですが、それが苦手で会話をしている相手と目をそらしてしまったり、その人との上下関係をうまく理解できないといった傾向があります。また、自分が言いたいことがあるときには一方的に喋ってしまうといったこともあるため、自閉症スペクトラム障害であることを知らない人には違和感を与えてしまいがちです。

コミュニケーションの障害について

社会性の障害と似ている特性ですが、相手とのコミュニケーションがうまく取れないといった特徴も見られます。コミュニケーションの中には言葉によらないもの、たとえば表情や身振り、手振りなども含まれていますが、スペクトラム障害によってこうした言葉以外のコミュニケーションをうまく理解できないことがあります。

また、言葉のコミュニケーションであっても冗談や「ボケ」などについてもそれを真に受けてしまい、ショックを受けたり怒りをあらわにしてしまうといったこともあります。

想像力の障害について

想像力というのは人間の重要な能力です。表に見えていないことであってもこれまでの経験や思考力によって想像し、それで問題を未然に防ぐ本能的なものです。スペクトラム障害では想像力に障害が見られることがあり、自分が決めているルールや道筋に合わない、予定外の事態になるとパニックになってしまったり、その自分ルールに強いこだわりを見せたりすることもあります。

 

仕事をするうえで抱えやすい悩み

自閉症スペクトラム(ASD)から仕事復帰するには?

それでは、大人の自閉症スペクトラム障害と仕事との兼ね合いについても考えていきましょう。自閉症スペクトラム障害と診断された方が仕事をしていくうえで、どんな悩みに直面しやすいのでしょうか。
最もよくいわれているのが、仕事をしていくうえでのコミュニケーションや他者との関わりです。相手が話していることがうまく理解できず、特に言葉によらないコミュニケーションや比喩的な表現がうまく伝わらず、それゆえに齟齬が生じるといった悩みはとても多く聞かれます。
さらにコミュニケーションにおける問題として「ほう・れん・そう」と呼ばれるような報告、連絡、相談といった業務を苦手とする場合が多く、周りから見ると何を考えているのか、果たして仕事の内容を理解しているのか分からないといった評価を受けやすくなります。
他人に対してだけではなく、自分自身とのコミュニケーションにも難が生じることがあります。自閉症スペクトラム障害でよくあるのは自分の心身の状態を把握しづらいために、疲れが溜まっているのに仕事に夢中になりすぎたり、体調が悪いのに無理をしようとしてしまうケースなどがあります。

 

自閉症スペクトラムの方に向いている仕事の傾向

自閉症スペクトラム(ASD)から仕事復帰するには?

悩みの一方で、自閉症スペクトラム障害の方ならではの強みもあります。主な強みとして挙げられるのは、正確性へのこだわりや記録力の高さ、集中力などです。その他にはロジカルシンキングへの適性や規範意識なども挙げられます。

これらの強みは、いわば弱みとなっている部分の裏返しです。自分のルールに対するこだわりが強いということは規範意識が高いことにつながるわけで、それ以外にも他者とのコミュニケーションを真に受けがちなところは、裏を返すと見えているものに対する高い処理能力ともなり得ます。
これらの傾向を踏まえて、自閉症スペクトラム障害の方に向いている職業を考えてみましょう。

文字情報に対する高い集中力と処理能力から連想されるのは、校正業務です。校正は文章の中にある「間違い探し」なので、一般の人であれば見落としてしまうようなミスに気づくことができるのは、高い処理能力ゆえのものです。また、規範意識が高いという特性をいかすと、企業の法務や法曹関連の仕事で高い適性を発揮することがあります。これらはいずれも自閉症スペクトラム障害の方が持っているこだわりの強さを裏返しにしたメリットといえる部分で、さらに自分が関心を持っている分野に高い集中力を発揮できる方であれば、それをいかして他にも活躍できる分野が見つかるかもしれません。

大人の自閉症スペクトラム障害と深く関わる仕事選ぶについては、このように弱みとなりがちな部分の裏返しを考えて、それがいかされる仕事は何かという思考を持つことが効果的です。

 

まとめ

今回は、大人の自閉症スペクトラム障害についてどんな特性があるのかを知ったうえで、その特性をうまくメリットにいかす方向で向いている仕事の傾向について解説しました。仕事復帰に向けて重要なのは「〇〇ができない」という消去法ではなく、「しかし●●ができる」という強みに着目した仕事選びが重要です。これまでにも自閉症スペクトラム障害と診断された方であっても多くの方が適職に出会い、そこで結果を出している事実があるのですから。