近年、うつ病を含む精神障害のある方の民間企業への就職数は増加が続いていますが、平均勤続年数は3年2か月と他の障害に比べて短く、正社員での雇用割合も25%という現状になっています。
離職の個人的理由としては、「職場の雰囲気・人間関係」が 33.8%と最も多く、次いで「賃金、労働条件に不満」(29.7%)「疲れやすく体力、意欲が続かなかった」・「仕事内容が合わない(自分に向かない)」 (28.4%)が多くなっています。
参考:厚生労働省 平成30年度障害者雇用実態調査
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この離職理由からみて分かる通り、個人差が大きいものの、一般的にうつ病など精神疾患は疲れやすく、日によって体調の変化が大きいと言われています。
正社員での雇用割合も25%程度となっており多くの人が非正規雇用での雇用になっているか、もしくは短時間労働で働くパターンが多く、その結果賃金や労働条件が低くなっています。
また、職場の雰囲気や人間関係に関しては、精神疾患に限らず、気持ちよく働くためには大切な要素です。特に、目に見える障害ではない精神障害の場合、他者から見ると困りごとがあっても分かりづらいです。
企業でのうつ病を含む精神疾患のある方の採用は増えてきていますが、まだまだ企業内で精神障害のある方のマネジメントのノウハウが積み重なっていないこともあり、本人の適性ではない仕事を担当になるなど、ミスマッチが起きている現状があります。
このように、早期離職となる理由は一概にこれとは言えず、企業側の問題もありますが、うつ病と付き合いながら働くご本人が工夫できることもたくさんあります。
入社する前、就職活動の段階から大切なことのひとつが、「障害を企業に伝えるかどうか」です。
オープン就労とは、病気や障害を就職先に開示した上で就職活動・就労することをいいます。障害者手帳を持っていれば、障害者雇用枠での採用が可能です。
クローズ就労とは、病気や障害を就職先に開示せずに働くことをいい、障害者雇用枠ではなく一般枠での就労になります。
うつ病はその日によって体調の変化が大きな疾患です。 フルタイム勤務だと体力が続かず辛くなってしまうという場合には採用面接の段階で相談をして短い時間から働き始めることができる場合もあります。
天気によって頭痛が出るなど体調の変化が起きやすい場合には早退の相談もしやすくなりますし、通院のための休みを申し出ることもしやすくなります。
就職や転職に際して支援機関のサポートを受けている場合には、必要に応じて支援者に採用面接に同行してもらうなど、入社から定着まで一貫してサポートを受けることができます。
病気に関する専門的な知識がない企業側にとっても支援者から正しい情報を得られることは安心感につながります。また就職後も、支援者との定期的な面談や職場訪問を通して 状況を把握してもらうことができ何か心配なことが出てきた時にも心強い存在です。
病気や障害があることを職場に伝えておくということは、無理をせずありのままの自分でいられます。無理をせず、自分のペースで仕事を続けていきやすくなります。
企業が出している障害者雇用枠での求人は事務職やサポート的なポジションの業務が多く、 選択の幅が少なくなります。
柔軟な働き方ができる裏返しではありますが、短時間勤務などをすると契約社員アルバイトでの採用が多くなりそのぶん待遇や賃金が低くなりやすいです。
またフルタイム勤務ができる場合でも、求人そのものを正社員での求人は一般枠に比べると少なくなります。
クローズ就労のメリットは病気や障害を就職先に伝えないため、就職活動の方法は一般枠と同じになります。そのぶん選べる表紙は職種の幅も広く、賃金などの待遇も、オープン就労に比べると良くなります。
クローズ就労では、特に業務や働き方に関して配慮などはされません。その分、裁量のある仕事を任されたり、キャリアアップしていくことが可能です。
うつ病があることを伝えずにいると、いつかばれてしまうのではとビクビクした気持ちになったり、罪悪感を持ってしまう場合があります。そのことで、他のスタッフの方と信頼関係を作る上でも気を使ってしまうことが増えてしまい、気兼ねすることがあります。
何か就労に関する支援機関を利用していたとしてもクローズ就労の場合は支援者に相談することはできても企業との間に入ったり職場で直接訪問してもらうなどの手厚いサポートが受けづらくなります・
職場でも、体調に波がある時にも相談しづらい気持ちになってしまいます。
クローズ就労の場合は離職率が高く転職を繰り返えさずに長く続けていくという観点ではオープン就労の方が自分に合った働き方ができます。そのためには、自分自身がうつ病という病気に向き合い、人に説明をして、必要なところは助けを求められるだけの自己理解が必要です。
賃金など悩ましい問題もありますが、病気の状態や体力を考えて、自分のキャパシティに無理のない働き方をすることが、長く働く上では大切です。
また、休みの日にはリフレッシュできるのも大切なことです。ついつい休みの日まで仕事のことを考えたり、肩に力が入ると緊張が続いてしまいます。休みの日は余白を作るようにしましょう。
うつ病経験して、その後うまく自分の特性を活かしながら働き続けることができる人もいます。その特徴として、自分に合うこと・合わないことを深く理解していることが挙げられます。
例えば、これまでの仕事やアルバイトの経験などから、「少人数で働ける職場が居心地がいい」「 忙しく臨機応変な業務は苦手だけど、正確さを求められるデータ管理の仕事は得意」など、自分の活かし方が自分でも分かるようになってきます。
病気は関係ないことですが、働く企業の社風と合うかも大切です。ベンチャー企業で変化が激しい環境を、楽しくてワクワクすると思う人もいれば、プレッシャーが強くて辛いと感じる人もいます。
採用面接の段階からこれらのことを伝えておけると、仕事内容や職場環境のミスマッチも防ぐことに繋げていけるでしょう。
ここまでうつ病の方が工夫できる、転職を繰り返さずにすむための考え方を紹介してきました。
ただ、精神障害がある方への対応は、企業にも課題があるのが現状です。まだ企業も手探りで雇用を進めているところがあるので、一緒に試行錯誤していく側面もあります。そんな時、必要なことを伝え、よりよい環境を作っていけるように準備しておきましょう。