働き続ける中で、どうしてもストレスはつきものです。ただ、ストレスは少なければいいというわけではなく、程よくストレスがあることが良い刺激になりモチベーションに繋がることもあります。
一方、どうしてもつらく感じてしまうことは、自分の許容量を超えると少しずつ自分を削ってしまいます。仕事関係のことであれば、自分の努力でストレスの元を失くすのは難しいことがありますよね。
ストレスの仕組みを知り、対処法を身に付けることができれば、自分の工夫で今より楽に働き続けることができます。
目次
ストレスを感じる原因のことを、ストレッサーといいます。
職場では、さまざまなことがストレッサーになりえます。
例えば、
などです。
ここに、個人の要因も関係します。
などです。
実際には、上記のような複数の要因がお互いに関係し合ってストレスを感じます。
私たちは、ストレッサーが生じた時に、自分のこれまでの経験や能力、価値観を元に、そのストレッサーを解釈します。そのストレッサーがどの程度自分に影響を与えるだろうかという判断をして、ストレッサーの影響が大きければ不安や恐怖、イライラといった感情が生まれるのです。
さらに、そのストレッサーに対して自分が対応可能かどうかを判断します。自分では解決することが難しい場合に心理的な負担となり、ストレッサーを解決するために対処する行動をとろうとします。
このストレス対処行動を、ストレスコーピングと呼びます。
ストレスコーピングは、様々な種類がありますが、ここでは3つのコーピングをご紹介します。代表的なものは問題焦点型コーピングと、情動焦点型コーピングです。
ストレスの原因となるストレッサーそのものに働きかけて変化させることで解決しようとする方法です。
例えば、上司や同僚といった対人関係がストレッサーである場合、相手の人や状況に影響を及ぼせる人に直接相談して問題を解決しようと試みます。部署異動や役割交代をしてかかわらないようにすることも含みます。
必ずしも、解決するためにその問題に深く入ることだけではなく、場合によっては距離をとることも問題焦点型コーピングと言えます。
不快な感情のケアに焦点を当てるコーピングです。
ストレッサーそのものに働きかけても解決が望めない場合、それに対する自分の考え方や感じ方を変える方法です。問題は続いていても、人に相談したり、ポジティブに解釈したりすることで精神的ストレスをケアし、負担を軽減します。
働く上では、様々な人がかかわり、会社の運営方針の影響もあり、自分で可能な情動焦点型コーピングで対処しようとする側面が多くなります。しかし、自分の力ではどうにもならない場面で情動焦点型コーピングのみを続けていても解決にはならず、疲れてしまうことがあります。そのような場合は情動焦点型コーピングと平行して周囲に協力を求めるコーピングが有効です。
社会的支援探索型コーピングとは、自助努力だけでなく、周囲にSOSを出しサポートを求めることです。問題焦点型コーピングの一つで、問題を一人で抱え込まないようにすることで、ストレスを軽減します。
一緒に働く人に状況を共有し、課題を抱え込まずに業務の役割分担ができるようにしたり、いざとなった時の相談先を確保しておいたりと、セーフティーネットを作っておくことで気持ちも楽にすることができます。
また、休憩時間や休日に上手に対処することも大切です。
心身をリラックスさせることにより、ストレスを緩和するコーピングです。マインドフルネス瞑想やヨガ、ストレッチなど、副交感神経が優位になり緩める効果があるものがあります。
簡単なものだと、深呼吸は仕事中にも実践しやすいでしょう。肩に力が入ってしまうことも多いので、わざと一度ぐっと肩をすくませて力を抜くだけでも脱力できます。
いわゆるリフレッシュです。軽いジョギングや散歩、森林浴など軽く体を動かせるものが代表的です。
趣味があれば、自分が好きなこと、夢中になれることに没頭するのもよいでしょう。
コーピングは1つの方法だけではなく複数の方法を同時に行ったり使い分けたりすることでより効果を発揮します。
コーピングはその時の状態に合う方法を実行できるのが一番です。
例えば、心理的ストレスが強く、もう我慢の限界に近いときに情動焦点型コーピングのみを行うのは、根本的な解決につながらず余計に負担になります。
会社の環境に問題があるときも、環境の変化ばかりを求めてもすぐに組織が改善されることは期待できず、自分の中で折り合いを付ける必要がある場合もあります。
まず冷静に状況を捉えることが大切です。
ストレスがかかる状態だと、そのストレスについてぐるぐると考えがちですが、一旦力を抜いて客観的に状況を判断してみましょう。
そして、情動焦点型コーピングを使って人に相談し気持ちを和らげながら、課題解決するための方法はないか、問題焦点型コーピング、特に社会的支援探索型コーピングを使って環境に働きかけていくのが有効でしょう。
間にリフレッシュやリラックスできるコーピングを挟みながら、複数の方法を試してみるのも大切です。
ストレスコーピングをうまく活用していくためには、職場で強くストレスがかかるときだけではなく、日常的に自分の状況を理解し波を掴んでおくのがおすすめです。自分の物事の捉え方の特徴に気づいたり、自分が置かれている環境を冷静に認識しておくと、といざという時に対処がしやすくなります。
職場では、予期しないさまざまな出来事が生じる場合があります。
自分を守ってくれるのは、ストレスコーピングの引き出しの多さです。
職場で仲の良い人、頼りやすい人普段からコミュニケーションをとり、社員が利用できる相談窓口があれば利用方法を知っていることも大切です。プライベートなら友人、家族などにも頼りましょう。通院している場合は主治医やカウンセラーも上手に利用してください。趣味を持つのも心の支えになります。
ストレス度が高くなるほど視野が狭くなりがちですが、難しい局面こそ自分1人で対処しようとせずに、複数のコーピングを試せるとよいでしょう。