「仕事となると気分が沈み出勤できない」
「でも、休みの日には元気になり遊ぶこともできる」
近年よく耳にする新型うつですが、新しい病気というわけではなく、時代の流れと共に注目され取り上げられることが多くなったうつ病の1つです。
本人の甘えなのではないか?と誤解されがちですが、本人はわざとそうしているのではなく、気分障害による症状です。詳しくみていきましょう。
新型うつというのは正式な病名ではなく、「非定型うつ病」と呼ばれるうつ病です。従来のうつ病の診断基準には当てはまらない部分があり、時代の変化とともに、うつ病の症状も多様になり、いくつかのうつ病の種類をひっくるめて「新型うつ」と呼ばれるようになりました。正式な診断名ではありません。
心療内科やメンタルクリニックへの受診がしやすくなったことから増加していると言われています。
新型うつは、従来のうつ病(大うつ病)と比べて、症状も人によって異なるのが特徴です。
うつの症状が強いときには、従来型のうつ病と同じように気分が沈み、興味関心や意欲が低下し、身体を動かすことができずぼーっとしてしまう、などの症状があります。
一方、気分の反応性があり、本人にとって楽しい出来事があると調子がよくなり、趣味などの活動にも取り組めるなど波があります。
対人関係に敏感で、うつ病になった原因を自分以外の何かに求めることが多く、食べ過ぎたり、睡眠時間が長くなる傾向があります。
対処としては、生活リズムを整えることがとても重要とされ、通常のうつ病では推奨されない励ましが効果的な場合もあります。生活リズムを整え、仕事に行くように背中を押すこともあります。
うつの症状が重い場合はもちろん休息の必要がありますが、本人も進んで休みをとるパターンが多いです。
うつは、新型うつに限らず男性よりも女性の方2~3倍かかりやすいと言われています。
女性は、1か月の中でもホルモンバランスの変化が激しく、妊娠出産などのライフイベントや、更年期などでホルモンバランスが変化します。
新型うつは20~30代の女性が発症しやすく、ライフスタイルの変化も多い時期です。
学業、就職、結婚、妊娠、出産などの変化が、本人のこれまでの生まれ育った環境や、もともと持っている気質と相互作用が起こることによって発症につながります。
通常のうつとは、いわゆる大うつ病をさし、35~50代くらいの中年期の男性に多く、生真面目で、責任感が強く、問題があると自分を責めることが多くなります。
調子が悪いことを隠そうとしたり、気分は常に落ち込み、趣味にも興味を持てなくなります。顕著に南無れなくなり、周囲からも体調が悪いことは分かりやすく、とにかくまず休むように促すことが多いです。
一方、新型うつは、20代~30代の女性に多く、仕事はつらいけれどプライベートではうつが軽減し、楽しんで過ごすことができるなど、気分には変化があります。疲労感が強く、自分でも気分をコントロールできずつらい思いをしているのですが、見た目からは分かりにくいです。
性格はよい子で、あまり普段から強い自己主張をせず、他人の目を気にするタイプが多いです。
うつ病は、セロトニンなどの脳の伝達物質が原因と言われ、その中でも、うつ病と新型うつでは異なる伝達物質の動きのがあるといわれていますが、まだはっきりとしたことは解明されていません。
新型うつの症状は、ぱっと聞くと、ただの本人の性格のように思われ、甘えやわがままと言われがちですが、嘘を言っているわけではなく、本人にとっては非常につらい状況です。
気分に波があり、ぱっと見た目では体調が悪いことが分からないこともありますが、倦怠感が強く、調子が悪いときには通常のうつ病と同じように気分が沈み動けなくなることもあります。
興味のあることには精力的に楽しめることもありますが、このような気分の波を本人がコントロールすることは難しく、治療が必要です。
しかし、他者からはこの気分の波が、本人の中でどのように起こり変化していくのが見えず、言動から判断することになるので、誤解が生じやすくなります。
新型うつでは脳の機能が低下し、ストレスに耐える力が低くなると言われています。
などの背景が考えられます。
表面的に出てくる行動としては、ストレスが高い場面には適応できずに、問題を回避し、会社や周囲の人など自分ではなく他者を責める傾向にあります。
人間関係に敏感で、社会生活の中でストレスを感じやすいのも特徴です。
一方、趣味など楽しめることには気分が上がるという気分の反応が見られます。
正しい知識がなければ、このような背景があることを理解することは難しく、言動から、職場の人だけではなく身近な人にも「甘えだ」「気合いが足りないのでは?」と勘違いされやすいのです。
本人にとっても、自分の意志でコントロールできない気分による行動を説明することは難しいために、誤解を生じたまま時間が経過しやすく、結果として辛い時期が長く続きがちにもなります。
しかし、病気としては思いのほか重いことがあり、長引きやすいうつでもあるので、医療機関に受診し適切な治療を受けましょう。
新型うつは、通常のうつに比べて症状や背景が複雑で、理解をするのに時間がかかるかもしれません。
しかし、時代背景とともに増えているとも言われており、今後も増えていく可能性があります。治療には長い時間がかかる場合も多いため、本人も、周囲の人も正しい知識を身に付けて適切な対処をしていくことが大切になるでしょう。