発達障害を抱える方に起こりがちな、アンコンシャスバイアスによるストレスについて(後編)

自分の症状を知る
アンコンシャスバイアス
2021/2/15
2021/9/14

どんなケースが想定されるか?

発達障害を抱える方に起こりがちな、アンコンシャスバイアスによるストレスについて(後編)

ここからは、発達障害がある方が困りがち事例についてみていきましょう。

以前の失敗を引きずって、過度に自信を失くしてしまい業務にあたれない

発達障害のある方が、マルチタスクや過集中または注意分散など特性の影響があって、業務の中でミスをしたとします。もちろん、それは障害特性がない方に関してもありえますが、「特性が出てしまい、ミスをしてしまった」と強く感じ、その影響を引きずってまた次もミスをするのでは…と思ってしまうようなケースです。

この場合は、「障害特性が出るのは良くないことだ」「業務で絶対にミスをしてはいけない」ということに関して白黒で決めてしまう偏った認知があると考えられます。

障害があること自体に自分でアンコンシャス・バイアスを持ってしまうことで、自己主張ができない

例えば職場の中の役割分担で、「本当はもう少しレベルの高い仕事ができるのにな」と思っても、そのことを自分から発信して仕事をもらったり、相談ができなかったりするというケースです。それは「自分は障害者雇用枠で働いているから」「あまり大きな期待はされていないんじゃないか」というようなステレオタイプなモノの見方や、過小評価が現れていると考えられます。

自分の中で決まったマイルールを、職場のルールよりも優先してしまう

例えば、業務で使う書類のファイルをの並べ方が、これまでとは逆の順番で並べる必要が出てきたという場面です。慣れずについつい置き間違えた、というわけではなく、なかなかそのルールになじむことができず「以前の順番の方がいいのではないか」「新しいルールとして〇〇だからと説明されたけどそれは受け入れがたい」と柔軟に適応するのが難しい、というケースです。慣れ親しんだ考え方やモノの見方に固執してしまい、別のものの見方に気づかない状態と考えられます。

 

改善方法

発達障害を抱える方に起こりがちな、アンコンシャスバイアスによるストレスについて(後編)

アンコンシャス・バイアスに関して、対処したり改善していくためには、アンコンシャスバイアスの存在を「意識」し、自分の思考に「気づき」、「対処する」という流れになります。

まず初めに、アンコンシャス・バイアスへ対処していくためには、自分に認知の偏りがあるということに気づこうとするかどうか、という心のもちよう=「意識」が大きく影響します。まずは、これまでのご自身の経験の中で、あのコミュニケーションはもやもやしたな、何かひっかかったな、と感じるようなエピソードを書き出してみてください。言葉になっていなくても今思えば気になる相手の「ノンバーバルな(言葉にならない)態度」もヒントになります。

そして、エピソードの中で自分は何を守ろうとしたのか、または相手の発言の何に傷ついたのかを言語化することが、「気づく」ことです。

アンコンシャス・バイアスの正体はストレスを感じた時に出てくる「自己防衛心」なので、そこに気づこう、とする行為は時には辛い作業に感じることもあるかと思います。しかし、何かしら日常生活や仕事の中でコミュニケーションに困り感を感じている時、その時は「改善したい」「対処したい」と思いやすいタイミングですし、対処することで同じようなトラブルが起きないようにする予防策にもなりえます。何かトラブルになりショックが大きい場合は、そのことをすぐに振り返ることはできないかもしれませんが、一旦時間を置いて、誰か一緒に考えてもらうなどしながら紐解いてみてください。

そこで、「あぁ、あの時〇〇と言ったけど、相手にはそう思っていなかったからうまくいかなかったのか」「ついつい、普通~だろうという前提で話をしてしまった」など気づきが出てくると思います。コミュニケーションをとったときの、自分や相手の感情に目を向けるのがポイントです。

そうすることで、「●●な考え方でいくと相手を傷つけてしまうから、今度は〇〇といった伝え方をしよう」「自分は〇〇という風に考える癖があるから、それを頭に置いておきながらコミュニケーションをとろう」といった風に「対処」ができるようになります。

慣れてくると、コミュニケーションをとっているその場で「あ、今自分の〇〇という偏った見方が出てきたかもしれない」と自分で気づき、修正できるようになってきます。そういった自分の気づきをノートにメモしておき、自分自身のコミュニケーションの教科書にしていくこともおすすめです。

発達障害がある方は、こういった相手の感情や背景を察知するのが難しい特性の方もいらっしゃると思います。その場合は、多様な「認知パターン」が存在すると理解すると分かりやすいと思います。そのパターンの引き出しを増やしていくことで、「こういう場面では〇〇と思われるかもしれないな」と予測できるようになっていきます。

 

まとめ

アンコンシャス・バイアスは誰にでもあるもので、誰でも、これまで生きてきた人生を通して物事を解釈しています。「自分にも認知の歪みがあるかもしれない」と自覚しておくことで相手を大切にでき、結果として自分を守ることになります。

アンコンシャス・バイアスは、仕事場面だけではなく、また障害の有無にかかわらず、日常に散らばっているものです。「あ、今の自分の考えって?」と気づくことから取り入れてみてください。